研究課題/領域番号 |
21K18330
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
加藤 有希子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20609151)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 黒 / 毒 / 忘却 / 中動態 / 色盲 / 黒白色覚 / アド・ラインハート / メランコリー / 中之島美術館 / 闇 / 暗黒啓蒙 / BLM / 倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、黒色とそれをめぐる倫理が、前近代から近代以降にかけて、神聖で静謐なものから、邪悪で歪んだものであるという認識に変化してきた理由を探究する。黒人差別や喪における黒の使用など、光度の低い色が蔑まれたり、疎まれたりする例は多々ある。日本人の白人崇拝や美白願望なども、そうした事例の一つである。そういった我々に内面化された倫理が何なのかを突き止めることは、我々がオートマティックに行う差別やヘイトや禁忌の原因を探ることである。それは歴史的起源なのか、もしくは黒や闇を避ける生物学的起源をもつのかを明らかにすることにより、我々の「悪」に対する認識を客体化し、それを乗り越えることができる。
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研究実績の概要 |
2023年度は「黒」という色が含み持つ「罪」「しがらみ」「妬み」「嫉み」「ネガティブな感情」といったものに焦点を当て、そこからどのように抜け出すべきかの倫理的な考察を行った。一つ目の成果は単著『オーバーラップ』(水声社2023)に同時掲載した「ブラックホールさんの今日この日」という短編物語で、恨みや復讐心などをもった存在がどのように、その憎しみの連鎖の鎖を断ち切るかをテーマにした文章である。この物語の中では、「忘却」という営みを主題にした。また二つ目の成果は、アメリカの20世紀のアーティスト、ジャクソン・ポロックが1951年から53年にかけて描いた「黒い絵」についての考察である。ここでも、ポロックの創作における焦りや憤りといったものが、どのように表現され、そしてどのようにその呪縛から抜け出すべきなのかを考察した。ここでは自意識を背負うモダニストの限界と、中動態による新しい打開策を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したよりも、倫理的な考察に偏っているものの、2023年度も2つの研究成果を上げることができ、順調に推移している。現在は「漆黒・桎梏」というまさに黒をテーマにした、創作的な物語を執筆中であり、その出版を最終年度の成果としたい。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、現在、『漆黒・桎梏』という、黒と性の呪縛について深く考察した創作的な物語の出版を準備している。この作品は、すでに水声社で企画会議を通っており、準備ができ次第出版の予定である。この出版をもって、本科研の最終年度の成果としたい。
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