研究課題/領域番号 |
21K18333
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
森 雅秀 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90230078)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 御室版 / 版木 / 印刷技術 / 仁和寺 / 皆明寺 / 曼荼羅 / 密教図像 / 両部曼荼羅 / 版本 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は京都の仁和寺に伝わる「御室版両部曼荼羅」の版木と版本に関する学際的・文理融合的な調査・研究である。御室版両部曼荼羅は、明治2年から3年にかけて京都の御室仁和寺で開版・刊行された両部曼荼羅の白描図である。空海によって日本に請来された正統な曼荼羅の仏たちの姿を伝える最重要資料のひとつに位置づけられる。本課題は、これらの版木、およびそれにもとづく版本を対象に、密教学や仏教美術史にとどまらず、書誌学、出版史、寺院史、文化財学、さらに物質科学、文化財修復学、保存科学などからの多角的・総合的な分析と考察、さらに保全と活用という将来まで見据えた研究を行う。
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研究実績の概要 |
御室版両部曼荼羅は、明治初年に京都の御室仁和寺の塔頭寺院、皆明寺で開版・刊行された両部曼荼羅の白描図である。金剛界と胎蔵界の両部曼荼羅のすべての仏(尊格)が版木に彫られ、その数はおよそ300面を数える。本研究は(1)データ採取と現状の記録、(2)版木と版本の比較研究、(3)版木の制作の背景と関係資料との比較研究、(4)資料の保全と活用の検討という4つの柱を持つ。このうち、今年度は(1)データ採取と現状の記録、(2)版木と版本の比較研究を重点的に行った。仁和寺との事前打ち合わせを数回行ったうえで、2023年2月には1週間にわたって仁和寺において御室版の全版木の写真撮影、採寸、現状の記録などを行い、それらのデータと、刊行されている御室版との比較対照を行った。対照作品は明治初年に刷られた初版本、大村西崖による大正期の刊本、佐和隆研による簡略本、および未発表の摺本(刊行時期不明)の四本を中心とする。データ採取においては、すべての版木にナンバリングを付し、仁和寺霊宝館の識別番号との対応関係を明らかにし、今後の御室版研究の基礎的な作業も行った。これらの結果、すべての版木の主要なデータは完備され、次の研究の段階に向けて着実な進展が見られた。写真撮影においては、斜光線を用いた立体的な効果を生み出す撮影を試み、版木の特質がより明瞭になるようつとめた。版木そのものに加え、左右の添え木(端喰)の状態も記録し、当時の印刷技術の実態を示す具体的な情報も収集した。一部の版木の添え木に記載された文字情報も収集し、御室版制作の歴史的背景の解明につながる重要な情報も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)データ採取と現状の記録、(2)版木と版本の比較研究、(3)版木の制作の背景と関係資料との比較研究、(4)資料の保全と活用の検討という研究全体の4つの柱のうち、(2)までを着実に完了し、さらに(3)の作業もおおむね良好な進捗状況である。現時点で、当初の計画の変更を必要とするような事態はなく、今後も研究計画通りに遂行されることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
(1)データ採取と現状の記録、(2)版木と版本の比較研究、(3)版木の制作の背景と関係資料との比較研究、(4)資料の保全と活用の検討という研究全体の4つの柱のうち、(3)の作業を今年度の前半で終え、(4)についてもこれと並行して進め、年度後半において重点的に取り組むことで、今年度内での研究の着実な完遂を見込む。研究成果として、版木全体の調査報告の刊行のための準備を進める。すべての版木の写真データ、法量、現状などを網羅するとともに、版木と摺本を対照させるような形態での公表を検討し、御室版の版木および摺本研究の決定版となる成果刊行を予定している。
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