研究課題/領域番号 |
21K18347
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (30712210)
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研究分担者 |
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (30424310)
加國 尚志 立命館大学, 文学部, 教授 (90351311)
北村 順生 立命館大学, 映像学部, 教授 (20334641)
半田 侑子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (50816767)
桜井 均 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (80595851)
山辺 春彦 青山学院大学, 法学部, 准教授 (70638783)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 戦後日本思想 / 知識人 / 身振り言語 / 加藤周一 / 丸山眞男 / 鶴見俊輔 / マルチモーダル / マルチモーダル法 / 書き言葉と話し言葉 / マルチモダール法 / 映像作品 |
研究開始時の研究の概要 |
研究対象となる加藤周一、丸山眞男、鶴見俊輔は戦後日本を代表する知識人である。三氏の言動は同時代の多くの人びとに大きな影響を与えた。三氏は著作活動を中心に知識人の活動を続けたが、同時に「おしゃべり」によっても活動した。おしゃべりは身振りを伴う。おしゃべりを聴く人は、話の内容もさることながら、話し手の身振りや表情によって、共感したり、反発したり、説得されたりする。 幸いにして三氏のおしゃべりの映像記録が多数残されている。この映像記録を研究材料として、話し手の身振り言語とその人の考えとの関係を明らかにし、聞き手はいかなる身振りや表情によって話者に対して共感するかを明らかにする研究である。
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研究実績の概要 |
本研究はこれまでの思想家研究のように、書かれた言葉からだけで理解するのではなく、書き言葉を十分に操ることができる以前の自己形成の過程から考察し、身振り言語から理解して、思想家のありようを明らかにしようとする研究である。したがって、研究は出生から研究者として独り立ちする過程を対象とする研究と、身振り言語から対象に迫る研究とを両立させないとならない。 そこで前年度に加藤と丸山に焦点を当てて、二人の出生から1945年の敗戦までの自己形成を辿り、二人の思想と行動の共通と相違を把握することに努めた。この研究は東京女子大学の丸山眞男記念比較思想研究センターとの共同研究として行い、その成果として『丸山眞男と加藤周一 知識人の自己形成』(山辺春彦、鷲巣力の共著、筑摩書房)を刊行することができ、これをもとに共通理解を構築することに努めた。さらに前年度に加藤周一、丸山眞男の自己形成における「母」の役割に注目して研究を進めたが、今年度は、加藤、鶴見の自己形成に及ぼした「母」の影響を比較検討した。 映像作品のアーカイブ化に関しては、前年度に引き続き、分担者岡本の指揮の元で①デジタル化(mp4形式)、ならびに②データベース化(xlsx形式)を行なった。①については昨年度にアーカイブ化した81本の映像に加えて新たに12本の加藤周一の出演する映像をデジタル化した。今年度はアノテーションソフトELANによる作業に最適なフォーマットとしてmp4形式を統一的に採用したため、前年度のアーカイブ映像の一部もmp4形式に再変換する作業も併せて実施した。②についても、映像ごとに各項目で分類してExcelファイルに記載し、データベース化を行った。その結果、総計93本分のアーカイブ化・データベース化が完了し、岡本の論文「語りに伴う睥睨の奥にあるもの――オラリティとしての加藤周一の思想を索めて」に結実した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マルチモーダル分析を進めるには、実際の映像作品を見ながら、記録していく準備作業が大事である。過年度では、その作業を複数名の大学院生に、研究法の習得の意味もかねて、進めてもらっていた。ところが昨年度、データ整備を進めていた院生は修士号を取得して、大学から離れ、マルチモーダル分析のためのアノテーション作業を行っていた院生は博士学位論文作成に時間を取られ、本作業に時間を割くことが出来なかった。 こうした状況により、当該年度に予定していたデータ整備および映像アノテーション作業を十分に実施することが叶わず、研究期間を延長して予算執行計画を大幅に見直す必要が生じた。 一方、加藤、丸山、鶴見の出演した映像作品は思いのほか多く、その作品を十分に研究するための準備が整わなかった。 丸山の映像作品を担当した研究分担者は、今年度から所属が青山学院大学へと変更になり、新しい職場でのさまざまな仕事に時間が取られ、丸山に関する映像の文で気が思うように進まなかった。 さらに鶴見俊輔の「母」の影響については進められたが、映像作品の分析にまでは進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の一年の延長が認められたので、24年度は本研究の最終年度としてしっかりと進めたい。特に、最終年度に改めて専従の作業者を雇用する必要が生じたが、既にその任に当たる作業者を確保している。また、院生に依頼していたマルチモーダル分析の準備作業も、一部は研究法習得の意味もかねて院生に委ねるにしても、一部は外部業者に発注することも予定している。一方、分析の方針についても、上記の岡本論文に示した発話と視線のマルチモダリティに焦点を当てて進めることが決定しているため、これまでよりも効率的な研究進捗が期待される。 なお、本研究の成果発表を対外的に実施することも検討しており、マルチモーダル分析の中心を担う分担者岡本を軸に、相互行為やコミュニケーション研究が主題となる関連学会および研究会にて、今年度中の研究報告を予定している。 丸山や鶴見の出演した映像作品についても、映像作品をそろえたうえで、ひとりの研究者に委ねるだけではなく、共同作業を進めながら取り組んでいきたい。
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