研究課題/領域番号 |
21K18354
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
三村 豊 総合地球環境学研究所, 経営推進部, 研究員 (90726043)
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研究分担者 |
石山 俊 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, プロジェクト研究員 (10508865)
市川 昌広 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80390706)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アート / 地域研究 / アンケート調査 / コンジョイント分析 / 文化芸術 / 超高齢化 / 表現の高度化 / 超学際的アプローチ / 文化資源 / 中山間地域 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、超高齢化する集落で、超学際的アプローチによる文化芸術の創出とその方法論を明らかにすることである。この研究蓄積が価値観の転換および社会変革を促す芸術存在の構造契機を明らかにできると考えている。具体的には、1)地域固有の知の把握と文化資源の収集、2)文化資源の分析とそれを活用した芸術への展開、3)聞き書きやアンケートによるエンゲージメント(つながり、絆、愛着)調査を通じて価値変化のプロセスを明らかにする。本研究では、文理融合による研究の蓄積と文化芸術を手掛かりに、超高齢化する集落の知の記録と継承、その過程のなかで新たな価値創造に働きかけるものである。
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研究実績の概要 |
本研究では、超高齢化する集落での記憶の継承とinclusive wellness(みんながよいこと)を考慮した文化芸術の価値創出とその手法論を明らかにすることである。2022年度は、研究対象地である高知県大豊町での社会実践に加え、高知県いの町、京都府綾部市、沖縄県久米島町を新たに調査地に加えた。2022年度の主な研究活動は、1)フィールドワークを通じた文化芸術の創出、2)学会での研究活動の報告、3)研究分担者および調査地のステークホルダーを交えた研究会の実施である。 高知県大豊町では、高齢者を対象に健康をテーマにしたダンスワークショップを2回実施した。京都府綾部市では、地域住民と共に民話をもとにした創作物語と絵コンテの作成を行なった。沖縄県久米島町では、自然環境の改善(赤土流出等防止)に資する新たな工芸品を現地のアーティストとともに議論した。 また、文化芸術の効果を計測する方法では、2021年度で報告したコンジョイント分析法について視覚的に理解できるイラストを新たに作成し、現地住民向けのアンケート調査票を作成した。このアンケートは、2023年度に実施予定である。 ステークホルダーを交えた研究会では、本研究開始時に予定していたが、コロナ禍の影響で実施できていなかった。そのため研究会では、これまでの活動実績や本研究の進捗状況について大学教員や研究者、アーティスト(演出家、歌手、ダンサー、絵本作家、映像作家、脚本家)との意見交換を通じて、フィールド活動での目的や方法について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究計画では、「地域固有の知の収集およびデジタル化」と「学問と芸術の融合における表現の社会実践」を主な活動として挙げている。特に、聞き書き調査やフィールド調査、文化資源の活用としてのワークショップを実施した。 研究分担者の市川は、東豊永集落活動センターで高齢者を対象にダンスを取り入れたワークショップを2回(2022年11月24日、2023年3月7日)実施した。ワークショップには約50人が参加した。講師に高知県出身の土居紋子氏を招聘し、80歳以上の高齢者を対象に健康促進と地域の文化(地域ならではの振る舞い)を取り入れた踊りの創作を模索している。 分担研究者の石山は、学問と芸術の融合を考慮したアプローチで、聞き書きと語りから民話の絵本作成を進めている。京都府綾部市でのフィールドワークでは、日本画家の荒瀬史代氏と共に民話としての創作物語を整理し、絵コンテを作成した。2023年度は、この絵コンテをもとに絵本の構成やレイアウトを検討し、絵本の発行を目指す。また、香川県漆芸研究所を視察し、漆芸の技法がどのようにして継承や発展に寄与するのか、その意義について作家にインタビューと映像記録を行った。文化芸術における民芸と工芸の違いを明らかにし、本研究における文化芸術の概念化につなげたい。 2023年度は、「表現の高度化および手法論の構築」を研究分担者や協力者と共にまとめる予定である。とりわけ、2022年度の研究活動では、絵本や映像、演劇、ダンスなどさまざま手法を用いて、地域住民と密な関係を構築してきた。次年度も引き続き、実践的な研究活動を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、文化芸術の創出と成果発信、その効果の計測を並行して研究活動を行う。そのため、2022年度はさまざまなステークホルダーとの知識の共有を常に意識して研究活動を実施してきた。2023年度は、本研究の最終年度になるため成果発信とその効果の計測を重視する。京都府綾部市での研究活動は、すでに民話をもとにした物語と絵本のイメージが完成している。夏までには、地域や行政との打ち合わせを終わらせ、年内の発行を目指す。高知県では、2022年度と同様に大豊町でワークショップを通じて、地域住民と協働した実践研究を進める。また、高知県いの町では、次世代への文化継承を目的にフィールドワークと演劇による成果発信を行う。 文化芸術の創出と成果発信の方法論として、1)山村における健康とダンス、2)演劇を通じた文化芸術としての負の遺産の継承と発信、3)民話と絵本による語りの継承について、プロセスの可視化と分析、その意義や効果について整理する。また、高知県大豊町の集落アンケート調査を実施して、定住者と関係人口(集落内にルーツがある者を対象)の価値観調査の報告書をまとめる。 2023年度の推進方策として、協力者のアーティストとの情報共有をもとに、文化芸術の創出と効果の計測について定期的な対面による打ち合わせやオンライン会議ツールを用いて議論する。2023年度は、各研究対象地で予定している演劇やダンス、絵本等を通じて、地域アートにおける文化芸術の効果についてまとめ、関係者や参加者にフィードバックする。
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