研究課題/領域番号 |
21K18358
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
徳永 健伸 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20197875)
|
研究分担者 |
山元 啓史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (30241756)
横野 光 明星大学, 情報学部, 准教授 (60535863)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 語彙テスト / 生産語彙 / 言語学習 / 対話システム / 語彙能力指標 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は言語学習者の生産語彙能力をコンピュータとの対話を通して自動的に評定する手法を提案し,そのプロトタイプ・システムを実装して手法の有用性を実証することを目的とする.この目的を達成するために学習者がコンピュータとの対話をおこなう過程で自発的に発する発話を分析し,学習者の生産語彙能力を客観的に評価するシステムを実現する.そのための要素となる手法・技術は言語処理ならびに言語教育の学術的な観点からも重要であるが,同時に言語教育の現場においては,教師の負担を軽減するとともに,適切な評価によって学習者の学習効率を改善する効果が期待できる.
|
研究実績の概要 |
本研究は言語学習者の生産語彙能力をコンピュータとの対話を通して評定する手法を確立することを目的としている.今年度は,以下の3つの項目について研究をおこなった. (1) 昨年度考案した同一のテーマの写真集合を刺激として与え,それらの写真から連想される語や状況記述を解答させる形式の語彙テストPic2PLexを日本語学習者の協力を得て,その有効性を確認した.この成果は人工知能学会論文誌に英語論文として出版した. (2) 語彙能力評定のための評価尺度として,従来は語彙のサイズを推定するものがほとんどである.語彙サイズの推定のための前提として,語の使用頻度による語の難易度を定義し,学習者は難易度の易しい語から学習することを想定している.我々は語の難易度に加え,獲得語彙の意味的な拡がりを評定に導入することを提案し,Vocabulary Volumeという新しい評価尺度を提案した.研究項目(2)で収集したデータを用いて提案した評価尺度が学習者の言語能力レベルをうまく弁別できることを示した.この成果をまとめ,International Conference on Computer Supported Education (CSEDU 2022)で発表した. (3) 対話における話者が使用する語彙レベルの違いが対話の進行にともなってどのように変化するかを既存の対話コーパス (BTSJ)を使って分析し,従来対話において観察されている語彙アライメントに加え,語彙レベルアライメントが起りうることを発見した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は言語学習者の生産語彙能力をコンピュータとの対話を通して評定する手法を確立することを目的としている.今年度は,以下の3つの項目について研究をおこなった. 昨年提案した生産語彙テストPic2PLexを日本語学習者21名,日本語母語話者4名の協力を得て生産語彙の評定実験をおこない,その有効性を確認した.この成果は人工知能学会論文誌に英語論文として出版した. 語彙能力評定のための評価尺度として,語の難易度に加え,獲得語彙の意味的な拡がりを評定にすることを提案し,昨年度,Vocabulary Volumeという新しい評価尺度を提案した.Pic2Lexの実験で収集したデータを用いてこの評価尺度が学習者の言語能力レベルをうまく弁別できることを示し,その成果をInternational Conference on Computer Supported Education (CSEDU 2022)で発表した. 対話を通して話者の語彙レベルを評定するためには,評定者が発話に使用する語彙レベルを制御し,それに呼応して被評定者の語彙レベルが同調できることを確認する必要がある.ただし,その前提として,対話において話者が互いに相手の語彙レベルに合わせて発話中の語彙選択をするという仮定がある.このような前提が成り立つかことを確認するために,対話における話者が使用する語彙レベルの違いが対話の進行にともなってどのように変化するかを既存の対話コーパス (BTSJ)を使って分析した.その結果,従来対話において観察されている語彙アライメントに加え,語彙レベルアライメントが起りうることを発見した.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題で提案したPic2PLexは従来の語彙テストと同様に一問一答形式なので,どちらかというと静的な環境における語彙の誘発である.これに対して対話の中で誘発される語彙はより動的な環境における生産語彙だと考えられる.これを実現するための研究項目として,(i) どのようにシステム(評定者)側の発話(刺激)を制御すればよいか,(ii) どのような観点から語を誘発すべきかが問題となる.(i)については,今年度BTSJコーパスを分析することによって,従来から認知されている対話における語彙アライメントという現象に加え,語彙レベルに差がある話者間の対話においては語彙レベルアライメントという現象が起りうることを新しく発見した.しかし,話者が発話中で使う語は話者の語彙レベルだけでなく,対話のトピックにも大きく影響される.これは(ii)の問題に関連している.コーパスの分析をさらに進め,トピックの変化と語彙レベルの関係についても調査をおこなう必要がある.それをふまえて,システムが刺激発話をする際の語彙を制御するメカニズムを実現する必要がある.次年度はこれらの項目を中心に研究を進める予定である.
|