研究課題/領域番号 |
21K18375
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
石黒 圭 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (40313449)
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研究分担者 |
野田 尚史 日本大学, 文理学部, 教授 (20144545)
砂川 有里子 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (40179289)
柏野 和佳子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 音声言語研究領域, 准教授 (50311147)
岩崎 拓也 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 特任助教 (60818037)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 日本語学習者 / 電子辞書 / 辞書使用 / 辞書アプリ / 言語資源・コーパス / 検索行動 / 語彙処理 / メンタル・レキシコン / 文章作成支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は日本語学習者の語彙探索行動の調査を行い、辞書使用の実態を明らかにするものである。具体的には次の3段階を踏む。①辞書ツールで日本語を調べる際、画面収録機能を起動して検索画面を録画してもらう。②その際、発話思考法を併用して思考内容を言葉にし、その発話も録音してもらう。③意図が不明確な行動は、フォローアップインタビューにより、意図の解釈を裏づける。2021年度はデータの収集を中心に行い、2022年度はデータの分析と研究発表を行う。
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研究実績の概要 |
現在日本語教育の現場において、学習者の多くが紙の辞書や原子辞書を使わず、スマートフォンの辞書アプリ等を用いて日本語の意味や使い方を調べていると予想される。しかし、それがはたして学習者の行動実態と合っているかどうか、また、かりにスマートフォンの辞書アプリ等を用いているとしても、その機能をうまく活用して必要な情報にアクセスできているのかどうかなどは明らかにされてはいない。そのため、日本語教育の現場での辞書使用法の指導や、辞書アプリのコンテンツ開発などに必要なリソースが不足していると考えられる。そこで、本研究は、日本語学習者を対象にオンライン行動観察調査を行い、辞書使用の実態を明らかにすることを目的として設定した。 具体的には、①辞書ツールで日本語を調べるさい、画面収録機能を起動して検索画面を録画してもらう、②その際、何のために何をどのように行ったのかという辞書探索行動を学習者自身が振り返り、その内容をエクセルシートに記入してもらうという方法を用いて、辞書使用の実態を明らかにすることを目指す。 本年度は、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、ベトナム語という母語を持つ対象者にパイロット調査を行うこと、そのパイロット調査に基づいて本調査を行うことの二つを予定しており、海外の調査はベトナム語話者をのぞき、おおむねデータ収集を完了した。一方、国内の調査は、現状では準備段階であり、2022年度の早い段階で着手することを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体として見ると、やや遅れている。海外の調査のうち、中国の2大学、台湾の1大学、韓国の2大学の調査はパイロット調査・本調査とも終了しているが、ベトナムの1大学の調査はパイロット調査終了の段階に留まっている。日本国内の調査も、海外の調査の遅れにともない、現在は準備中という段階にある。そのような遅れが生じてしまった理由は以下の三つである。 一つ目は、辞書ツール使用の時間の問題である。当初、学習者1人あたりの1週間の辞書使用時間を1時間と見積もっていたが、辞書探索行動を調べてみると、予想よりもはるかに長い時間、辞書と向きあっていることが判明し、データ収集と整理に時間がかかることがわかった。 二つ目は、調査方法の問題であり、一つ目の問題とも絡むが、学習者の辞書使用時間が長く、また、その方法が多岐に亘ることに伴い、当初予定していた発話思考法やインタビューが現実的でないことがパイロット調査の結果から判明した。そこで、エクセルシートに辞書探索行動を記入してもらうという新たな方法に舵を切ったが、その記入用エクセルシートの開発にかなりの時間を要した。 三つ目は、新型コロナウィルス感染症の問題である。海外の調査を先行して行ったが、海外の諸都市でもコロナが猛威を振るっており、調査を依頼している教員と学生との接触がうまくいかないケースが多発した。とくにベトナムにおいては、調査を依頼していた教員自身がコロナに感染し、一定期間体調を崩していたため、パイロット調査の段階に留まってしまった。 しかしながら、学習者が予想よりも長い時間、辞書を用いていることがわかった結果、データ量自体は当初の計画よりも多く集まっており、データ収集自体は進んでいると見ることもできる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、遅れている本調査、すなわちデータ収集を終わらせる必要がある。海外の調査においては、ベトナムの1大学については2022年度の4~5月に調査を行うべく準備が進んでおり、早期にデータの収集を完了させる見込みが立っている。また、日本国内の調査においても、夏休み前、すなわち6~7月までに収集を完了させる予定である。 また、計画を予定どおりに終了させるためには、当初の予定よりもデータ収集に時間がかかった分、分析を迅速に進めることが必要となる。この点については、すでにエクセルシートへの記入という方式に切り替えたことでメドが立っており、発話思考法やインタビューを用いた場合よりもはるかに容易に調査結果の集計が可能になる仕組みになっている。そのため、分析の基礎となるデータの整備はさほど遅れないと見こまれる。
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