研究課題/領域番号 |
21K18379
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 大正大学 (2023) 京都大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
冨井 眞 大正大学, 文学部, 教授 (00293845)
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研究分担者 |
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
高宮 幸一 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (70324712)
吉井 秀夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (90252410)
千葉 豊 京都大学, 文学研究科, 准教授 (00197625)
伊藤 淳史 京都大学, 文学研究科, 助教 (70252400)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 中性子放射化分析 / 胎土 / 土師器 / 色調 / 中世 / 刻印瓦 / 製作技術 / 素地 / 瓦 / 刻印 / 窯業生産 / 幕末 / 土佐 / 微量元素 / 胎土分析 / 地域経済史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、在地での生産と消費が想定される故に多量に出土しても流通論には供さなかった前近代の低火度焼成土器類(土師器と瓦)に対して、中性子放射化分析(=NAA)を実施して粘土生地(=胎土)の化学的分類に取り組むとともに、製作技術や出土状況等の考古学的検討も加味することによって、在地消費型窯業製品の生産・流通・消費状況に基づくミクロな地域経済を考察する。NAAによる胎土分析を確立して、各地に豊富に存在する埋蔵文化財の活用促進も射程に入れながら、物質資料から高解像度で地域経済史を復元するための作業モデルの構築に挑む。
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研究実績の概要 |
本研究は、①中性子放射化分析(=NAA)による胎土分類法の確立、②在地消費型窯業生産品の生産体制の多様性や均質性の解明、③その流通状況の復元、以上3点を具体目的としている。研究実施計画に沿い、令和5年度は以下の作業を実施した。 A)京都大学でのNAA(目的①②に対応):都の近郊に位置する消費地遺跡で一括出土した中世後半期の土師器のうち、法量と色調に従い、赤皿・赤小皿・白椀・白小椀の4種から各7点を分析した。その際、既往の照射条件を変えずに新たな定量化法(k0法)も導入しつつ、半減期の短い核種の元素のデータを得た。結果、[Na]と[La]に着目すると2群に分かれ、それは色調の違いに合致した。[Na]値は瓦の分析でも有効だったが、今回は希土類の[La]で明確な違いを見出せたことは、高感度のNAAならではの成果と言えよう。 B)土師器の胎土グループと製作技術グループとの対照(目的②③に対応):製作技術グループの検討では、口縁端部の整形にわずかな差異を認め得たが、それは胎土グループとは合致しなかった。また、法量の違いも胎土グループと合致するとは言えない。 A・Bから、胎土グループの違いと色調の違いとに相関がうかがえる。これらが消費地で遺構から一括出土しているので、土師器は色調に応じて生産から流通まで異なる動きをしていた可能性も否定できない。 C)刻印瓦と製作地の田土の胎土分析(目的②に対応):土佐藩邸出土刻印瓦と同じ屋号で現在も営業している高知県安芸市内の瓦工場の近傍で、かつて瓦素材として採集したと伝わる田土を収集し、その屋号の出土刻印瓦およびその他3種の刻印瓦の計20点に蛍光X線分析を実施した。刻印グループはそれぞれ胎土グループに合致したが、田土は独立したグループになった。これは、瓦の素地が複数要素のブレンドであること、各工房で独自のブレンドをしていたこと、を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究期間内に研究課題を完遂できなかったので、遅れている、と断じざるを得ない。これは、研究代表者の異動によるものである。 初めて常勤教員として勤務することになり、専門講義のコマ数が一気に増えたことに加え、初年度からコース教務主任や学科代議員を務めたこともあって、研究時間をほとんど割けなかった。さらには、検討対象資料が前任校の所蔵であるため、資料の確認には東京-京都間を往復せねばならず、これまでのような日常的な観察もできなくなった。 しかし、異動の一年目を経たことにより、学務に関しては年間スケジュールも把握できたので、助成期間を延長して臨む次年度には、本研究課題に計画的に取り組める。
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今後の研究の推進方策 |
目的①においては、試料の採取から照射ではおよそ方法を確立できており、また検討に有効な元素の有無にも展望が開けてきたが、長寿命核種の元素組成についてはまだ検討の余地があるので、今年度に試験的に導入した元素同定の省力化が期待されるk0法を、中近世の土器類で再度試みる。 目的②・③である在地消費型窯業生産品の生産から消費までの状況の解明に向けて、以下の研究推進方策を進める。 (1)瓦については、生産地の巡検および資料の胎土分析も実施でき、技術グループの検討も進めた結果、一通りのデータは整ったので、次年度に考察を深める。 (2)土師器については、胎土分析の資料を増やすことに加えて長寿命核種の元素組成からも胎土グループの多様性の有無について検討を深める。そして、技術的検討と対比させた上で、出土状況を参照して、全体的な考察をする。
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