研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は,地球科学分野で確立・熟成された解析手法の他研究分野への最大級の波及効果を狙った世界初の試みであり,最先端の解析手法を考古学分野に提供するための挑戦的課題である.具体的には,近代地質学への最大のパラダイムシフトである「ジルコンの局所年代法」を土器に適用する.本研究では,破壊を伴う解析に必要な土器の総量とジルコン混入の起源について,ジルコン年代測定に加え,鉱物分離,胎土分析,鉱物種分析からアプローチする.土器は世界各地の遺跡から普遍的に出土し,一つの遺跡から多量に出土する場合もあるため,本分析手法の確立により,極めて「広域的に」「高密度で」「高精度な」物流ネットワーク解析が展開できる.
本研究は,近代地質学への最大のパラダイムシフトである「ジルコンの局所年代法」を土器に適用し,考古学分野における世界最先端の分析手法として確立することを目的とした挑戦的課題である.研究過程では,筑紫地区遺跡群出土の弥生土器と須恵器に加えて,遺跡周辺から採取した岩石,粘土,川砂を用いた.土器資料中のジルコンの混入量は,資料により異なるが,本遺跡の弥生土器に関しては,10グラム程度で十分な解析が可能であると見積もられた.また得られた年代値から,土器中のジルコンは混和材ではなく粘土由来であり,両者の年代頻度曲線は完全に一致することが明らかとなった.
これまでの土器の製作地や粘土の原産地の最も精密な解析手法として,土器の化学組成の測定,いわゆる胎土分析がある.しかしながら,土器の原材料である胎土は,粘土と混和材から構成されており,胎土の化学組成は粘土の化学組成と一致せず,さらに混和材と粘土の割合の変化による組成変動の影響を受けるため,直接的な対比が困難であった.一方で,本研究から得られたジルコンを用いた解析結果は,土器と粘土を直接的に対比することが可能であり,起源の異なる土器片を明確に抽出することが可能であるとともに,その流通元についても遺跡周辺に分布する岩石中のジルコン年代と比較することで極めて正確に解析し,説得力あるデータを提供できる.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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