研究課題/領域番号 |
21K18384
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
西山 伸一 中部大学, 人間力創成教育院, 教授 (50392551)
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研究分担者 |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 文化遺産保護 / データベース / イラク / レバノン / 記録システム / クルディスタン / リモートセンシング / 地理情報科学 / 考古学 / 考古遺跡 / 文化遺産 / アーカイヴィング / 西アジア |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、近年紛争や開発などで急速に破壊がすすむ西アジア(中東)地域の文化遺産についてどのように記録をとり、それらをどのように保存することができるのか、考古学と地理情報科学の方法論を融合・応用して、新たな手法を生み出すことが目的である。近年、考古学のフィールド技術は、地理情報科学の知識・技術を活用し、急速に発展している。しかし、世界的にみると文化遺産の記録(アーカイビング)システムの構築までは至っていないところが多い。この研究では、できるだけ安価かつ継続性があり、西アジア諸国において普及しやすいシステムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
これまでのまとめ段階に入ったこともあり、特にイラクにおける文化遺産のデータベースについて作成を進めた。このデータベースは現地スレイマニヤ古物文化遺産局より提供された主に外国調査団によって収集されたデータ、および日本調査団により取得された考古遺跡の位置情報、時代、周辺環境、現状(破壊、破損状況を含む)などが含まれている。将来的には、現地機関にデータベースを提供することで、考古遺跡の保護に向けて日本との協力見解を構築してゆく。またいくつかの考古遺跡については、UAV(ドローン)を利用した測量データも取得できており、これらの簡易情報をデータベースに搭載する研究を進めている。ただ、測量データは、外部に流失した場合に、遺跡の盗掘につながりかねないため、慎重な取り扱いが望まれる。考古遺跡以外では、スレイマニヤ市内に残る歴史的建造物があり、これらのデータベースへの取り込みについても検討している。イラク以外では、レバノンにおいて、南ベカー高原におけるレバノン大学との共同調査の成果、ならびに地中海沿岸部のバトルーン遺跡の調査成果をデータベースに統合する作業を行った。レバノンでは、史上最悪といわれる経済危機の中、周辺諸国の治安悪化も加わり、当地の文化遺産保護は厳しい状況下に置かれている。このような中で少しでも現地に貢献する研究を行うべく作業を進めている。レバノンに関してもUAVによる測量データも一部では存在することが判明したため、データベースに組み込む研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により現地への渡航ができずデータの取得などが遅れたが、2023年度での作業によりおおむね遅れを取り戻したと感じている。ただシステム構築にはもう少しだけ時間がかかることから、研究期間の延長を行う。イラクにおいては、スレイマニヤ古物文化遺産局のはからいにより考古遺跡のデータベースの基礎となるデータを取得し、それについて議論をかさねてきたことが研究の進展に大いに貢献している。また日本調査団によるシャフリゾール平原などの考古学踏査のデータも活用できたことが研究に大きな進展をもたらした。レバノンにおいては、レバノン大学との共同研究により南ベカー高原ならびにバトルーン遺跡とその周辺のデータが取得できたことが大きい。レバノンは、イラクよりも考古遺跡のデータベースや記録システムについては遅れており、この研究成果が貢献する点は大きいと考えている。レバノンでは、考古遺跡およびそこから出土した遺物や遺構についての記録のシステム化についても研究を進めたが、分量の多さと、内容の複雑化から研究期間内でのデータベース化は困難であると判断した。ただ、遺物の種類や内容については試験的に記録システムに取り込む予定にしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後としては、考古遺跡に対象を絞った文化財の記録システムを構築することを考えている。またそれに伴う手引書の作成も視野に入れている。西アジアの文化遺産は、21世紀に入ってもますます破壊や破損の危機にさらされている。現地当局もさまざまな対策を講じているが、一様には解決しない課題である。これに国際的に貢献するための文化財の記録システムの構築は、その小さな一歩であると考えたい。このシステム構築の要諦は、現地当局の職員たちが実際に使用し活用できるという点にある。多くのデータベースや文化財の記録システムが欧米各国によっても開発・提供されてきたが、現地での使用や活用にはなかなか至っていない。現地で手に入る器材や資材を使い、簡便に記録できるというのがまずは重要でないかと考える。現地でも古物文化遺産局をはじめ様々な機関で実際に使用や活用できるのが第一と考えている意見を耳にした。本研究で作成する記録システムがどのような現地での評価を受けるのか、意見を真摯に受け止め、将来の研究に活用してゆきたいと考えている。もちろん、器材やシステムは将来的に改善してゆくべきものであるが、根本の記録システムは、大きな変化はないと考えるので、より利便性の高いものへと発展させてゆければよいと考えている。
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