研究課題/領域番号 |
21K18386
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 副主任研究員 (50548188)
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研究分担者 |
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40392550)
岡田 文男 京都芸術大学, 芸術学部, 客員教授 (60298742)
大谷 育恵 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80747139)
南 雅代 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90324392)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 漆塗膜 / 製作地推定 / Sr同位体 / 漆工芸品 / 多元素同位体分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、考古遺物としての漆工芸品の漆塗膜の理化学的分析より漆工芸品の製作地を推定するための方法論を提示することを目的とする。その実現のため、漆・下地・顔料などの漆塗膜の各成分の分離、ならびに分離した微少量の試料に対する多元素同位体分析を実現するための分析化学的手法開発を行う。漢代漆器・オホーツク文化期の直刀に対して、開発した手法による分析と蒔絵の種類・製作技術の解析などの情報を統合し、総合的に製作地の推定を試みる。
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研究実績の概要 |
本課題は、遺跡より出土した歴史時代の漆工芸品の製作地を推定することを最終目的として、漆塗膜の原材料の金属元素同位体分析を正確に行うための手法を開発し、その同位体比から原材料の原産地に関連する情報を正確に抽出することを試みるものである。本年度は、主として漆塗膜の化学分解法の条件検討ならびに漆の原産地推定に利用する対照資料の基礎データ収集を行った。 R4年度に行った漆塗膜資料の予備分析では、塗膜の漆成分を化学的に分解する際に、漆工芸品の下地として用いられている珪酸塩鉱物粒子が同時に部分的に分解されてしまうことが明らかになった。そこで、本年度は漆塗膜の化学分解条件について、アナログ試料を用いた実験的方法によって検討を行った。さまざまな組成を持つ珪酸塩鉱物粒子の混合物を、漆工芸品の下地として用いられる珪酸塩鉱物粒子のアナログとして準備し、分解に用いる酸の強度・反応温度等を試験し、珪酸塩鉱物粒子からの元素抽出(特に同位体分析を想定しているSr・Nd・Pbの3元素の抽出)がもっとも少なくなる条件を探索した。 次に、漆原産地推定のための対照資料として、現代において生産・採取される漆樹液資料の収集をR4年度に引き続いておこなった。本年度は、各地の漆生産者ならびに漆保存活動関係者に協力いただき、国内15地域より28試料の漆樹液資料を収集した。また、国内外5地域7試料については市販品の購入によって収集を拡大した。また、和歌山県岩出市(根来)ならびに新潟県村上市では漆生産地周辺の現地調査を行い、植物試料に加えて土壌・河川水等の環境試料の採取を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R4年度は、昨年度に引き続き総合的な漆塗膜の同位体分析手法の開発を行い、検討すべき条件はわずかにのこるものの、おおむね実際の出土資料の分析に移行する条件は整ったといえる。当初計画に追加して実施している走査型電子顕微鏡―エネルギー分散型X線検出器による出土資料の漆塗膜切片の観察・分析については、R4年度も継続して実施しデータの蓄積を行った。現代漆資料の収集・分析については、収集開始が当初予定より2ヶ月ほど遅れたため、R4年度は資料の収集並びに整理にとどめ、R4年度に実施予定であった同位体分析はR5年度に実施することに変更した。 以上から、本研究は当初計画よりもやや遅れて進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度も、基本的には計画に従って研究を遂行する。特に、現代漆資料ならびに出土資料の同位体分析に注力する予定である。また、R4年度まではコロナ禍の影響によって出張を要する打ち合わせや実験が計画通り実施できないという問題があり、研究代表者・分担者間で十分に議論を尽くせなかったが、R5年度は対面の打ち合わせ等が十分に可能なことが期待されるため、主要データ取得後の総合的議論を十分に実施する予定である。
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