研究課題/領域番号 |
21K18388
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 課長 (20301004)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 大型砥石 / 鍛冶関連遺物 / 纒向遺跡 / 刀剣製作開始年代 / 布留遺跡 / 刀剣類 / 3D / 直刀 / 素環頭大刀 / 鉄器生産 |
研究開始時の研究の概要 |
古墳時代に入り、古墳から大量の鉄製刀剣類が出土するようになる。大陸では素環頭大刀が全盛なのに対して、倭では環頭部を持たない倭独自の直刀が主流である。近年大規模な鍛冶遺構や鍛冶関連遺物が確認されているが、そこで何を製作したのかは未成品が出土しなければ具体的に確認できない状況にあり、倭での直刀の製作開始時期は、古墳時代前期末以降とみるのが学会の主流である。そこで、新たな視点として大型砥石に注目する。全長30㎝を超える多角柱状の大型砥石は、小型利器への使用には不適で、大型の利器への使用が想定される。大型砥石の全国集成と分類を通じて、刀剣類の製作開始年代についての再検討を行う。
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研究実績の概要 |
今年度は、主に長崎県原の辻遺跡とカラカミ遺跡について2回の資料調査を実施した。原の辻遺跡調査では、弥生時代の大・中型の砥石を多数確認した。しかし、砥石の研面全幅を利用した古墳時代の纒向遺跡や布留遺跡出土砥石などで確認した研ぎ方と大きく異なり、砥石の研面の一部を用いた研ぎ方が主力であることを確認した。「長崎県原の辻遺跡にみる大型砥石の二相」としてまとめ、『古代史と遺跡学』に投稿した。 並行して纒向遺跡の大型砥石と、非常に多数の砥石が出土した勝山池付近の様相をまとめて、古墳時代前期に纒向遺跡で大量の鉄器研磨が行われたことを示した「纒向遺跡における鍛冶関連遺物の基礎的研究」を『橿原考古学研究所論集』第18で発表した。その他に、大型鉄器製作についての研究成果の一部を用いて、桜井茶臼山古墳の鉄杖やメスリ山古墳の鉄製弓矢、黒塚古墳のU字形鉄器などの特異な製作技術を用いた鉄器群が有機質の器物を鉄に置き換えた倭製と指摘し、ヤマト王権の工房での製作の可能性を『桜井茶臼山古墳の研究』で指摘した。 それ以外に鉄器生産と刀剣類を含めた鉄製武器の消費編年を整理する中で「古墳時代鉄製武器における伝世の考え方」を『器物の「伝世・長期保有」「復古再生」の実証的研究と倭における王権の形成・維持』(研究代表:岩本 崇)の科研報告書にまとめた。 また、学会での口頭発表として、高知大学で開催された中四国前方後円墳研究会に参加し、鉄器生産の様相を踏まえて「古墳時代後期の鉄鏃編年」を発表し、他の副葬品を扱う研究者と砥石の見方と刀剣類の製作開始時期について意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
科研開始以来、新型コロナ感染症予防対策により、大型砥石の調査がほぼ実施できない期間があり、調査が大きく遅れた。文献調査など移動を伴わないものは先行して行え、いくつかの研究成果を論文等で公表できているが、その過程でさらに調査の必要箇所が増加しており、結果的に、研究には遅れがみられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長を申請し、受理されたので、もう1年間、研究を継続し、大阪府大仙中町遺跡、三重県六大A遺跡、宮崎県柊野第1遺跡などの大型砥石を調査し、古墳時代に入り、砥石の在り方が変わったかどうかに重点を置いて、型式学的な整理を中心にまとめを行う。
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