研究課題/領域番号 |
21K18421
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中林 真幸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60302676)
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研究分担者 |
西谷 正浩 福岡大学, 人文学部, 教授 (80248468)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 荘園制 / 土地証券 / 加地子 / 加地子還元土地価格 / 法の保護 |
研究開始時の研究の概要 |
a. 「東寺百合文書」(ウェブ公開http://hyakugo.kyoto.jp/)に収められている農地1筆毎の加地子額と売券価格を悉皆入力し、1筆毎、2~4世紀間の超長期パネルデータを構築する。 b. 加地子(資本)還元から得られる理論価格と実勢価格の系列によって仮説1を検証し、農地固定効果を制御しつつ仮説2を検証する。農地固定効果を制御しつつ、差の差分析によって仮説3を検証する。長期にわたる大規模経営の系列であるので幕府法施行の地域的差異を識別に利用する。在地領主台頭の効果はstructural break modelによっても検出する。
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研究実績の概要 |
中世の荘園制においては,統治業務を提供する債務と,その業務の対価として収取することが認められる債権を組み合わせた職(しき)が,農民,武士,貴族の間に重層的に保有される,分散的な統治と所有の構造を持っていた。このうち,名主職(みょうしゅしき),作職(さくしき),百姓職(ひゃくしょうしき)と呼ばれる,地主層の職は,特に活発に売買された。中世中後期における生産性の上昇部分が,地主の職の請求権に加地子(かじし)として取り込まれた上,その売買は荘園領主の承認を必要とするため安全資産であったからである。本研究の目的は,この地主の職の売買における価格決定の仕組みの解明にある。具体的には,土地の生産性以上に地主層の職の価格差が大きいという,これまでの学説が説明できていない事象を説明するために,加地子の成立と拡大によって説明できるとする仮説を検証することが目的となる。そのために,地主層の職の売買契約(売券)のうち,売買価格のみならず,加地子の情報を含んだものを収集し,データベースを構築することが必要になる。関連する研究として,貴田潔(2017)「第3章第2節 中世における不動産価格の決定構造」深尾京司・中村尚史・中林真幸編『岩波講座 日本経済の歴史 第1巻 中世 11世紀から16世紀後半』岩波書店,177-196,230-231の分析の基礎である鎌倉期の地主層の職の売買記録を網羅的に集めたデータベースである貴田潔(2016)「鎌倉期の不動産売買ver.01」(http://hdl.handle.net/10297/9855)がある。しかし,このデータベースは加地子情報を含んでいないため,原史料に戻り,加地子に関連する情報が記載されている物件について,その情報を入力する作業を行い,完了した。また,東寺百合文書のうち,加地子の記載のある史料のテキストファイルの作成を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数量的なデータベースの構築を2022年度に終え,2023年度に行う数量分析を準備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
数量データベースが完成したことから,最終年度である2023年度には分析を行う。伝統的な回帰分析に加えて,機械学習を応用したノンパラメトリックな推定も試みる予定である。合わせて,上記貴田データベースのうち,加地子の記載のある史料について全文を入力してデータベースを拡張し,文言と加地子,売券価格の間に相関があるか否かを機械学習によって調べることも計画している。そのため,加地子記載のある史料のテキストデータ全文をデータベースに加える作業が必要となるが,データベースを完成させ,史料に慣れている学術専門職員が入力に従事することにより,速やかに完了することが期待される。
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