研究課題/領域番号 |
21K18426
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花薗 誠 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60362406)
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研究分担者 |
中林 純 京都大学, 経済学研究科, 教授 (30565792)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 調達入札 / 多次元入札 / 総合評価入札 / 非対称な入札者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は多次元入札の研究基盤を理論的に整備するとともに、実証分析のための構造推定の方法を整備・開発することを目的とする。入札参加者に価格のみならず、事業者の属性や事業内容に関する提案といった価格以外の他の要素を入札させ、その総合評価によって落札者を決定する「多次元入札(multidimensional bidding)」は、公共調達の受注事業者選定や石油/ガス採掘権売却などで広く用いられている。結果として、入札制度設計に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
多次元入札の一形態である総合評価方式入札における戦略的な意思決定問題に関して、以下のような新しい結果を加えた。総合評価による評価値の計算方法が個々の入札者によって異なる場合であっても、評価値の大小の比較で落札者が決定される限り、一位評価値入札において純戦略単調ベイズナッシュ均衡が存在することを証明した。この結果により、中小企業保護にみられるような一部の事業者が優遇されるケース(ハンディキャップオークション)や、えこひいきや癒着、ある種の評価者の裁量が認められるケースにおいても、競争的な入札行動の分析が拡張されることから、総合評価方式入札の分析枠組みを一層広げることができた。また、以前想定していた対称的な環境における実証研究手法は、上記のような非対称な環境にも拡張可能で、ナッシュ均衡行動を構造推定しモデルのパラメータや分布を識別できることがわかった。 合わせて、事業者の私的な費用関数のパラメータが多次元という一般的なケースは、パラメータが一次元であるケースとは本質的に異なるものである点について整理した。というのも、一次元のパラメータであれば、費用効率に自然な全順序が定められるが、多次元にわたる費用関数のパラメータについては、費用効率は部分順序しか定められないからである。一次元のケースではそのような特殊な順序構造からしか得られないような強い結論、たとえばオークション形式によって均衡における落札評価値の期待値に優劣ができるなどといった結果が得られるが、多次元のケースではそのような比較をすることは理論的に考えて難しいという理由を明らかにした。これらの結果は論文“Theory and Estimation for Scoring Auctions”に追加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
多次元入札に関する分析基盤の整備が進んではいるものの、研究計画にあげた相互連関的な評価方法という課題については当初の予想以上に分析が困難であることが判明し、研究が十分に進んでいない。また、総合評価方式入札の反実仮想分析のために、モデルの均衡行動を導く方法の解明についても検討しているが、モデルの不動点であらわされる均衡状態を導出・近似する方法がまだ見つかっていない。一案として、モデルにおける入札空間を離散化して、そのグリッドを細かくすることによって連続的な入札空間に近づけるようなアプローチを取り、比較的細かいグリッドのケースにおける入札行動をコンピュータプログラムによって近似できるか検討している。しかし、そのケースでも入札行動が均衡入札に収束するかどうか自明でなく、それがグリッドの粗さに起因しているのか、そもそものモデルの構造に依存した挙動なのかが判明していない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、多次元入札において入札の評価値を落札確率と同一視して多次元入札を分析する方法の推進する。一般的な分析を遂行することが困難であるので、簡単なケースや関数形を特定化した例を用いて解決の糸口を探す。併せて、総合評価方式入札における均衡入札行動の反実仮想分析のための、均衡をシミュレートする方法をできる限り理論的に解明するべく一層の努力を行う。これまでの理論的結果から、一定の単調性を持つことが示されている均衡行動であるが、均衡が安定性を満たしているか、あるいは安定性を有するために必要なモデルのプリミティブがどのようなものかを検討する。安定な均衡であれば何らかの動学及び適切な初期条件を用いて均衡を近似できる可能性がある。そのような結果が得られれば、動学を用いてして均衡をシミュレートできるかどうかを確認する。
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