研究課題/領域番号 |
21K18430
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (80334879)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | プラットフォーム市場 / 市場全体を獲得する競争 / 新規参入 / 補完財 |
研究開始時の研究の概要 |
オンラインプラットフォーム企業は人々の生活に根付いているが、ネットワーク効果を通じた独占化への懸念もある。この独占化の流れを踏まえ、市場全体の獲得を目指す「市場に対する競争 (competition for the market)」に注目が集まりつつある。プラットフォームの問題を分析する際、既存プラットフォームの補完財生産者として参入した上で、現存企業の顧客基盤をテコにして新たなプラットフォーム市場を創造することで、より容易に市場を獲得する競争に挑めると予想される。この参入様式を考慮して、市場に対する競争を経済理論分析する。
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研究実績の概要 |
本年度は、研究計画でも言及したBakos and Halaburda (2020,RAND)ほかJeitschko, Jung, and Kim (2017,JEMS)などでも検討されている消費者が単一企業からのみ購入するのではなく複数企業から購入可能な状況に注目して、プラットフォーム事業者の競争について検討した。 想定する市場は、ゲームや動画の制作会社と消費者をつなぐ配信会社が競合する市場が典型例となるが、手始めとして、制作会社の存在は考慮しないで配信会社が競合する市場における価格戦略について検討した。Shiller (2020,IER)は、配信会社のデータ解析能力を踏まえて、精度の高い価格差別の経済効果を定量分析しており、この問題意識を踏襲した理論となっている。消費者が複数企業から購入可能な状況における価格戦略を検討した結果、両企業が精度の高い個別条件提示を行わない状況が存在すること、また、従来の研究成果と異なり、精度の高い個別条件の提示によって競争が促進されるとは限らず、企業利潤を改善させて消費者厚生を損なう可能性があることを示した。これはLu and Matsushima (2023,ISER DP 1192R)として公開した後に、国際学術誌に投稿した。 前述の設定を手がかりとして、制作会社の存在も考慮した設定に拡張することで、プラットフォーム市場の核となる両面性を取り入れた。一般に企業と消費者をつなぐプラットフォーム企業の価格戦略を分析すると消費者を優遇する結果が得られやすいが、消費者側に対して精度の高い個別条件提示ができる場合、消費者側から余剰を吸い上げる傾向が生じうる可能性があることを示せた。この結果は、従来の関連研究と異なる結果であると同時に、競争政策上の意義もある。今後、結果を整理して草稿を公開した上で、国際学術誌に投稿したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プラットフォーム市場の分析は進んだものの、当初予定の市場構造とは異なるため、当初予定通りに進展しているとは言いがたい状況にあるため。 次項「今後の研究の推進方策」に記載した通り、当初予定と合致する市場構造として新しい設定を思いついたのは好材料で、これらの課題に挑戦して、競争政策や競争戦略の観点から意義のある成果を生み出せるようにする。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の報告書で言及した、検索連動型広告事業者(現在有力なプラットフォーム企業)と事業形態が異なる事業者(例えばコード決済事業者)が消費者の注目を集める競争を行い、集めた消費者に対して企業広告や企業が提供する各種特典を伝達することで広告収入などを得る状況を検討することを検討したが、理論枠組みを設定するに至らなかったため、これは継続して検討する。 他、検索連動型広告事業者による他分野への参入としては、自社の一般検索を利用した検索型電子商取引市場への参入がある。この参入は一般検索と直接関連する広告市場における競争環境を歪めたことで問題となったが、自社の強みを活用した他市場への参入形態として注目に値する。これも研究の対象に含めて検討する。 今年度着手し始めた配信事業者間の競争については、結果を早い段階で草稿としてまとめて学術誌に投稿できる状態にしたい。
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