研究課題/領域番号 |
21K18431
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
家森 信善 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (80220515)
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研究分担者 |
祝迫 得夫 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90292523)
上山 仁恵 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (90295618)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ファイナンシャルプランニング / 高齢社会 / 金融リテラシー / コロナ禍 / 助言者 / 高齢者 / 金融経済教育 / 資産選択 / 生活設計 / ファイナンシャルプラン |
研究開始時の研究の概要 |
従来、若中年家計がいかに資産を蓄積・運用するかが議論され、高齢家計の金融行動に焦点を当てた議論は乏しかったが、金融資産の取り崩し方法や判断能力が衰える中での金融助言者の活用など、高齢者特有の金融問題が高齢社会を迎えた日本において顕著になってきており、新しい研究が必要になっている。そこで、人生100年時代を迎えた日本において高齢者が安心して暮らせるためにどのような金融リテラシーが必要か(助言者の適切な利用を含む)を、家計アンケートの結果を利用して明らかにして、高齢者のためのファイナンシャルプランニング論の構築に挑戦する。
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研究実績の概要 |
ファイナンシャルプラニング論は、急激に研究が進展している家計金融論の重要な柱の一つである。本研究では、人生100年時代を迎えた日本においてどのような金融リテラシーが必要か(助言者の適切な利用を含む)を明らかにして、ファイナンシャルプランニング論の構築に挑戦している。 2022年度は、2022年9月に「高齢者の認知機能と金融行動に関する調査」を実施し、当該調査を元にして、家森信善・上山仁恵「「高齢者の認知機能と金融行動に関する調査」結果の概要」(神戸大学経済経営研究所 Discussion Paper Series DP2023-J01 2023年1月)を発表している。 同調査では、金融資産の取り崩しや活用の方法に影響を与える金融リテラシーや、そうした行動において必要とされる金融助言者の役割に関しての質問を行っている。また、同調査の特徴の一つは、2018年と2019年に我々が実施した調査の回答者に対して追跡調査を行っており、3、4年の間の変化を分析することが可能となっている点にある。 金融リテラシーに関する3大質問への正答率を、2018年調査と比較すると、複利計算と実質金利の正答率は下がっているが、分散投資の正答率は増加している。より広い問題をカバーした28問質問への正答数を比較すると、2018年調査に比べて2022年調査の平均正答数は約2点減少しており、これは1%水準で有意であった。このように金融リテラシーは高齢者において年齢を経るにつれて有意に低下していく傾向が見られ、高齢社会において金融リテラシーの低下を前提においた金融商品やサービスの提供が求められる。ただし、金融リテラシーの低下が顕著な分野がありそうである。また、本調査の実施時期は、コロナ禍の発生という特殊な環境であり、そのことが何らかの影響を持っているかもしれず今後の精査が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りに、アンケート調査を実施し、その調査に基づく分析を発表できた(家森信善・上山仁恵「「高齢者の認知機能と金融行動に関する調査」結果の概要」RIEB DP2023-J01 2023年1月)。 さらに、この調査を補完するために、次の2つの調査を行った。まず、2022年8月に3,000人を対象にして「金融リテラシーとリスクマネジメント行動(2022年)」調査を実施した。その成果は、家森信善・上山仁恵「家計のリスクマネジメント行動と金融リテラシー-2022年調査の概要報告-」(RIEB DP2022-J10 2022年11月)として公表し、また、保険学の研究者の集まりである保険学セミナーにおいて「自然災害リスクへの対応と金融・保険リテラシー」のタイトルで研究報告を行った(2023年1月7日)。 二つ目の調査は、2023年1月に実施した「コロナショック下の家計の金融レジリエンスと金融リテラシーに関する調査」である。コロナ禍によって資産管理・運用に対する考え方に変化があったというのが36%に達していた。また、コロナ禍において経済的な問題があった人の内35.7%は「相談していない」と回答しており、相談体制の不備が指摘できる。この成果は、家森信善・上山仁恵「「コロナショック下の家計の金融レジリエンスと金融リテラシーに関する調査」の結果概要」(RIEB DP2023-J04 2023年3月)の形で公表している。 また、『読売新聞』(2022年5月19日)、『読売新聞』(2023年2月15日)、『信濃毎日新聞夕刊』(2023年3月28日)などに、金融経済教育の専門家としてコメントを寄せており、研究成果の社会還元にも取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、最終年度でありこれまでに実施したアンケート調査結果を使って、一層の分析を進め、国内外の専門雑誌への論文掲載を目指すとともに、社会に向けて成果を還元する。さらに、2023年度には、法律改正が行われて、新たに金融経済推進機構が設立される見通しとなっており、金融経済教育についての関心が高まることは確実である。そこで、本年度も新たな問題意識に基づいて金融リテラシーや金融経済教育に関するアンケート調査を実施し、高齢者に必要なFPや金融業・助言業についての調査を行う。具体的には、顧客本位の業務運営が求められるところから金融機関職員側の意識についても確認するための調査を実施することを検討している。その調査結果に基づいて、高齢者に対する支援の観点から望まれる金融商品や金融機関のビジネスモデルを提言する。
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