研究課題/領域番号 |
21K18453
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (30621198)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 幸福度 / 高齢者 / 国際比較 / アジア / 超高齢社会 / 多国間比較 |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢社会において目指すべき社会は健康寿命の延伸を追求するだけでなく、病気や障が いがあっても安心して満足に幸せを感じて生きることができる社会である。本研究では、 高齢者において幸福感を規定する要因を文化横断的にアジア3か国(日本、ミャンマー、マレーシア)の疫学データをもとに探索し、超高齢社会で目指すべき指標を示す。さらに、現在追跡中の高齢者の中で病気や障がいを持つにいたってなお幸福度が高い集団に着目し、疫学データと客観的測定データからその特徴に迫る。本研究では、ますます増えゆく高齢で病気や障がいを持つ人の生活の質を多角的に評価できる指標を新たに開発する。
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研究実績の概要 |
ミャンマーにおいては軍事クーデター勃発(2021年2月1日)の後、初めてとなる渡航を実現することができ、同国の高齢者の現状について把握することができた。研究を進めるためにコホートの追跡調査を実施することについて、カウンターパート研究者であるヤンゴン公衆衛生大学の学長に了解を得た。しかし、現状の同国においては、保健省の倫理委員会の承認なしに研究調査を進めることは困難であり、まずは倫理委員会への申請準備を進めた。追跡調査では訪問調査を実施する計画とし、インタビュー内容を含む調査項目の詳細を検討した。全ての調査計画書類(英語)を準備し、カウンターパート研究者にミャンマー語訳してもらい、倫理審査委員会への申請を行った。実際の倫理審査委員会は年に数回しか開かれておらず、次回は令和6年度となる予定である。倫理審査終了後は速やかに調査を実施する計画である。 マレーシアにおいてはコロナ禍で、これまで渡航して現地を視察することが困難であったが、渡航を実現し、今後の計画について、現地のカウンターパート研究者と検討を進めることができた。マレーシアでも近年、急速に高齢化が進んでおり、高齢者を対象とした研究への気運が高まっている。これまで、セランゴール州とサバ州における高齢者社会疫学調査から、マレーシア高齢者における健康の社会的決定要因に迫る分析を実施してきており、年度中に論文を投稿した(査読中)。今後、サバ州における追跡調査の実現可能性について検討中である。これらの調査とは別に、ペラ州において、介入研究を開始する事を検討している。東南アジア高齢者における幸福度をアウトカムとした介入研究は類がなく、今後の研究進捗が望まれる。 国内の十日町コホートでは、2017年のベースライン調査と2021と2022年の追跡調査のデータを用いて、高齢者の幸福度と関連する要因を分析する作業を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特にミャンマーにおける高齢者コホート調査の追跡調査を実施する時期が遅れている。理由としては、ミャンマー国における政治社会状況の大きな変化とコロナ禍によるものである。2021年の軍事クーデター勃発後は安全に渡航することができなくなった。このため、カウンターパート研究者や調査を依頼した調査会社とメール等で連絡をとり続けた。その後、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、研究者が所属する大学でも海外渡航は特別な理由がない限り認められない状況が続き、調査の再開が難しかった。すでに立ち上げた高齢者コホート調査であったため、電話調査による追跡のみ継続できたが、対面調査で得られる情報に劣るため、研究進捗は限定的であった。令和5年度にようやく渡航が可能な状況となり、現地渡航により多くの情報を得ることができた。今後は、高齢者コホートの対象者への訪問による追跡調査を実施する予定である。現在は、追跡訪問調査のために国への倫理申請の準備段階であり、着実に調査実施に向けて進捗をはかっている。
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今後の研究の推進方策 |
ミャンマーでは、ヤンゴン地域とバゴー地域においてコホート調査の追跡調査を実施予定である。現在、ミャンマー国保健省の倫理申請中であり、連携をとりながら、現地のカウンターパート研究者を中心に手続きを進めている。調査実施後は縦断的分析を実施する。 マレーシアではデータ収集後の分析方針を研究者間で検討する。分析を進めるために、マレーシア研究者と日本の高齢者研究の経験ある疫学者が連携する環境を作る計画である。新たなフィールドとして候補に挙がっているペラ州の介入研究については、現地の研究者と連携し、日本の経験が役立つよう情報を提供しながら進める計画である。 ミャンマーとマレーシアの調査データと国内のデータを合わせた分析と有用な解釈を発信すべく、研究者間の連携と情報共有に努める。どのような個人がどのような他者との関わりがあれば、幸せなのか、さらには生きる国や社会によって異なるのかを検討し、病気や障がいを持つ高齢者の幸せの指標開発に資する分析を進める。
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