研究課題/領域番号 |
21K18456
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 (2022) 名古屋大学 (2021) |
研究代表者 |
香坂 玲 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50509338)
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研究分担者 |
出口 茂 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), センター長 (40344296)
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
松岡 光 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 研究員 (70750016)
神山 智美 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00611617)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 食文化 / フードテック / 培養肉 / 人新世 / 代替肉 / 昆虫食 / 風土 / 質 / 合成食 / ソーシャルラーニング / コンベンション・セオリー / ミレニアル世代 |
研究開始時の研究の概要 |
持続可能な食料供給の観点から期待される合成食・培養肉・植物肉を題材とし、食材・調理法から風土・タブーを内包しながら、動的に変容する「食文化」を概念枠組として、「質」と「連続性」を軸にその受容のプロセスを世代間比較で読み解き、専門家と社会の多世代での受容シナリオを解明する。結果、①新技術の受容・変容・拒絶を把握し、②専門家ネットワークの特定、用語・概念・論拠の共有範囲と傾向を解明する。③消費者と専門家の双方向の議論を通じ、環境配慮・安全に関する再帰的な根拠の認識、反応過程から対話型の倫理の萌芽を把握し、④持続的な社会及び食文化の変容シナリオと、規格・基準設計への示唆を得る。
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研究実績の概要 |
規範・倫理が未整備となっている培養肉・植物肉などの現状、食文化への受容の認識について、国際的にデータを収集し、分析を実施した。その一環として、新技術の受容について、日本とシンガポールにおける昆虫食と培養肉に関するマスメディアの記事の言説分析と比較を実施した (Matsuoka, Uchiyama, Woraitthinan, Kohsaka, 2023)。昆虫食の記事の分析から、グローバルな食料供給について言及する記事が両国共通する一方で、シンガポールのみでスタートアップへの言及が多いことが判明した。総体的には畜産業を含む産業的背景、宗教、食の歴史を含む両国の報道の差が把握された。また、政策の現状分析として、シンガポールなどの他国と日本の政策及び政策枠組を比較し、培養肉に関する総説から環境・政策面での議論を整理し(Miyake, Tachikawa, and Kohsaka, 2023)、培養肉では、EUやシンガポールにおける食や食料安全保障についてのアクションプランから研究開発推進政策につながる政策枠組を明らかにした。こうして得られた結果は、国際誌Food Research Internationalなどを含む学術論文、知財学会特集(フードテック時代における知財と風土[テロワール] 食文化と消費への示唆)等で発表した。同特集では産官学の寄稿があり、研究・政策の動向、受容について各方面からの示唆に富む見解が示された。口頭発表でも、第7回東京大学-ケンブリッジ大学合同シンポジウムにおいてフードテックの時代における風土の特性について、またベルリン日独センター共催シンポジウムにおいて日独の食の将来課題について議論を行った。社会的貢献として、成果は国連の生物多様性条約、農水省の食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会の議論でも還元された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実績から、合成食・培養肉・植物食などフードテックの新技術についての受容について、テキスト分析、国際比較を実施した。進捗から、現状の技術が関係する様々な主体を含んだコンヴァンシオン理論における「質」の理解、用語の利用範囲の傾向も明らかになった。今後は、新技術の多世代間の受容、政策提案、規格・基準設計についての示唆の蓄積を進める。
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今後の研究の推進方策 |
合成食・培養肉・植物肉を含む食文化への受容、用語・根拠の共有範囲の傾向、及び、質について質的・量的な方法論の双方から総合的、国際的分析が可能であることを明らかにした。来年度は、異なる食材・調理法について質も含めた受容についての分析を進め、持続的な社会づくりに向けた食文化の変容シナリオと、政策提案、規格・基準設計についての示唆の蓄積も進める。異なる主体や、地域が関わる「質」と「連続性」の果たす役割についても総合的な方法論の確立を目指し、技術・規制に加え、持続可能な食料供給、食文化を可能にする風土・景観、対話の関係についても検討課題とする。
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