研究課題/領域番号 |
21K18457
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小笠原 理恵 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70814375)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マイノリティ・ヘルス / 新型コロナウィルス感染症(COVID-19) / 多文化社会 / オンライン調査 / 新型コロナウィルス感染症 / マイノリティヘルス / 医療受診 / レジリエンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大の中、日本在住の言語的・文化的マイノリティ住民が保健医療受診に際して遭遇した困難と、それに対する既存の保健医療体制の限界を、当事者を対象とした全国規模の量的・質的調査から明らかにすることである。 COVID-19は、人びとの健康は医学的知見だけでは解決されず、社会学的見地から医療体制を見つめ直すことの重要性を再認識させた。マイノリティ住民の視点を通して、批判的に日本の保健医療のあり方を見直し、既存の「日本人(マジョリティ)のための」医療のあり方に一石を投じることから、レジリエントな保健医療体制構築の基盤づくりに貢献したい。
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研究実績の概要 |
日本語で策定したアンケート調査を、各言語の研究協力者によって英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語の5か国語に翻訳し、テストランを行った。並行してアンケート調査の協力を求める広報用チラシを5か国語併記で作成した。すべての最終確認が終了したのち、オンラインアンケート調査を開始した。広報用チラシは、研究協力者から各自の活動領域に拡散してもらうとともに、外国人患者対応で著名な医療機関および自治体の国際交流協会などに配布した。オンラインアンケート調査は、7月から11月までの4か月間行ったが、得られた回答総数は169にとどまり、かつ有効回答数は100に満たなかった。とりわけベトナム語、ポルトガル語、スペイン語の回答が極めて少ない状況であった。またこの間は、新型コロナウィルス感染症の変異ウィルスが問題になるなど、コロナの状況も刻々と変化していたこともあり、質問項目の見直しを検討する必要があった。 第26回日本渡航医学会学術集会において、同学会のインバウンド委員会主催の企画シンポジウム「九州の外国人医療の現状」を研究協力者らとともに企画し、座長として登壇した。また、全国市町村国際文化研修所(JIAM)の国際文化研修「外国人が安心して医療を受けられるための環境整備」に招待講師として参加した。さらに、公益社団法人日本WHO協会の定期オンラインセミナーでは、「だれひとり取り残されない外国人医療」を企画・運営し、ファシリテーターとして登壇した。こうした活動を通じて、日本に住む言語的・文化的マイノリティ住民の保健医療受診の現状について、アカデミアのみならず一般市民に向けて情報発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アンケート調査は予定通り開始することができたが、回答数が予定に達していない状況にある。特に中国語圏以外の言語に関しては、回答数がかなり伸び悩んだ。一方、新型コロナウィルス感染症に伴う社会情勢も刻々と変化し続け、その都度、質問項目を精査し直すか否かの検討が必要だった。最終的には、今回の調査では質問項目の大幅な見直しはせず、最初の2年間の動向を追うことに決定したが、その検討に予定外の時間を費やさざるを得なかったことで、当初の計画よりも遅れが発生した。 上記の理由から1年間の補助事業期間の延長を申請し承認を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
当初、オンラインアンケート調査は3か月間を予定していたが、回答数が予定数に達していない。2023年度は、広報の手を全国の国際交流協会や日本語学校などに広報の手を広げてアンケート調査を再開する。同時に、研究班会議においてインタビュー調査に向けた議論を進め、インタビューガイドを策定する。これまでに回答を寄せてくれた回答者の中からインタビュー調査対象者を抽出し、適宜インタビュー調査を開始する。インタビュー調査対象者の抽出に関しては、年齢や性別、居住地などの属性を考慮したうえで、各言語5名前後を予定している。再度の広報にもかかわらず回答数が足りない状況が発生した場合には、日本在住外国人をモニターとして抱えている民間の調査会社に、データ収集の一部を委託することも検討する。 オンライン調査で得たデータとインタビュー調査で得たデータを統合し、研究班会議によって全体の考察および投稿論文の検討に入る。国内の学術誌に加え、海外の学術誌にも積極的に投稿を検討する。研究協力者の希望や同意によっては、日本語と英語以外の発信も積極的に検討する。論文の投稿準備と並行し、シンポジウムを開催して研究調査の最終報告会を実施する。シンポジウムには、行政担当者、医療従事者、支援団体等の関係各位を招く予定である。
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