研究課題/領域番号 |
21K18474
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末松 和子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20374887)
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研究分担者 |
渡部 由紀 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60600111)
新見 有紀子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (90747396)
奥村 キャサリン 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (30637567)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 技能実習生 / 特定技能外国人 / 外国人労働者 / 定着支援 / 外国人定着支援 / 異文化適応 / 国際共修 / 産学官連携 / 外国人定住支援 / 多文化共生 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国に在留する外国人、とりわけ昨今、社会問題化しつつある技能実習生および特定技能外国人の定着に着目し、定着の現状とプル・プッシュ要因を分析する。また、東日本大震災以降の若年人口の流出で深刻な労働力不足と高齢化に直面する東北地方の外国人受け入れ企業、地方自治体、支援団体、大学等の多様なステークホルダーの視点を取り入れた、これまでにない産学官協働・共修支援システムを構築する。外国人と地域社会の相互交流・学び合いを取り入れたサステイナブルな定着支援の開発とその有効性の検証を通して、新世代の多文化共生モデルを構築し、成果を国際シンポジウム等を通して国内外に広く発信する。
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研究実績の概要 |
東北地方における技能実習生・特定技能外国人受け入れ最大県の宮城県に着目し、水産加工業で就労する技能実習生・特定技能外国人を対象とした以下の研究・支援活動を実施した。 1.技能実習生・特定技能外国人を対象としたパイロット調査:石巻市牡鹿地区、気仙沼市の水産加工業、建築業で働く実習生等への聞き取り調査を実施した。インタビューに事業所の社員が同席するケースもあり、技能実習生が自由に発言できる場が担保されているとはいえない状況であったため、データ収集方法の軌道修正について意識を向ける良い機会となった。2.上記の結果を反映させた本調査の準備:質問紙調査の設問を本研究チーム以外の専門家の話を聞きながら吟味・決定した。日本語で作成した質問紙を技能実習生出身国上位3国(ベトナム、インドネシア、中国)の3か国語に翻し、Google Formを作成した。3.気仙沼の技能実習生管理団体を訪問し実習生のリクルーティング、来日後日本語研修、生活適応支援につきインタビューを実施した。4.技能実習生を受け入れる事業所の社員を対象としたケース・スタディ:インタビュー調査を実施し論文を執筆 5.技能実習生・特定技能外国人との意見交換会・交流会の実施:日本文化(七夕、食文化)をテーマとした交流会を石巻と気仙沼で開催した。6.技能実習生・特定技能外国人が直面する問題に対する啓発セミナーの実施:専門家を招聘し研究会および移民問題に取り組む東北大学生向けのセミナーを実施した。 これ以外に、宮城県との比較研究を行うために、同じく水産加工業で働く茨城県大洗地区の技能実習生・特定技能外国人を対象にインタビュー調査を実施した。さらに技能実習生を含む外国人を対象とした日本語教育プログラムを提供する茨城県国際交流協会を訪問し、ヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石巻市牡鹿地区、気仙沼市の水産加工業、建築業で働く実習生等への聞き取りパイロット調査では、期待以上の協力者を確保できた一方で、インタビューに事業所の経営者や社員が同席したり、不要な発言を制するような行動を確認したりするなど、技能実習生が自由に発言できる場が担保されないと感じる場面が散見された。これらより、本調査は通常の紙ベースでのアンケートやインタビューではなく、実習生が寮の自室など安心して答えられる環境で、匿名で調査に回答できるWEB調査に切り替える調査方法に軌道修正を行うことにした。 また、上記の結果を反映させた本調査の設問を作成する際、東北大学の研究倫理委員会から数点、修正依頼があったため、調査開始まで少し時間を要する結果となった。しかし、設問をブラッシュアップすることができたため、このプロセスは研究に必要であったと理解している。 場所を問わず、技能実習生を受け入れる管理団体や事業所は実習生を対象とした調査には敏感に反応することが分かったため、入念な関係構築が必要であることをあらためて実感した。 技能実習生・特定技能外国人との意見交換会・交流会は、上記のような技能実習生や事業所の社員の警戒心を解くためには有効であることが分かった。交流をしながら、状況を聞き出すことができたため成功であったと言える。 技能実習生・特定技能外国人が直面する問題に対する啓発セミナーは、東北大学の学生にとってインパクトが大きく有益な内容であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前半でWEB調査と聞き取りによるデータ収集と分析を進め、技能実習生と特定技能外国人定着におけるプル・プッシュ要因を分析し、コロナ禍が実習生・特定技能外国人および受け入れ企業に与えた影響を検証する。基礎研究で明らかになった課題や要望に基づき、外国人労働者が必要とする日本語教育を含む支援プログラムを開発する。地域社会による相互理解、協働・共修を取り入れた産学官連携外国人定着支援プログラムの開発に向けて、地域のお祭りやイベントを有効活用し、技能実習生と地域住民が学び合える外国人および地域社会のニーズに沿ったプログラムを開発する。継続してプログラムの効果を評価し、PDCAを通して改善に努める。また、このような機会を大学が介入し創出することで、高等教育の地域社会への参画のあり方や、留学生ではない外国人労働者の定着を支援し、多文化共生社会を構築することの意義について検証する。これらの研究成果を論文もしくは書籍で発表する。
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