研究課題/領域番号 |
21K18512
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森田 愛子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20403909)
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研究分担者 |
高橋 麻衣子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (60534592)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 範読 / 黙読 / 音読 / 冗長効果 / 内声化 / 視線計測 / EVS / 読解支援 / アセスメント / 個別最適化 / 眼球運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,教室場面における個々の児童の日常的な読解行動によって,自動的に,アセスメントから支援の最適化までを行うアセスメントパッケージの開発に着手する。具体的には,児童が範読(他者が読み上げている音声を聞きながらの黙読)をしている時と音読をしている時の音声と視線の同期の程度を測定することで読解力レベルを判定する基準を作成する。さらにそのレベルによって理論的に読み手に適した読解方法を提案するための理論的基盤と妥当性の検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究2年目にあたる2022年度には,黙読中の音韻情報処理について次の2つの研究を実施した。 第1に,2021年度に実施した実験を発展させ,読み能力によって音声情報呈示の有効性が異なるかを検討する実験を実施した。参加者は,モニターに呈示される文章を読み,逐語記憶課題と内容理解問題に回答した。その際,範読音声(あり・なし)×語彙サイズ(大群・小群)の2要因を操作した。範読音声あり条件では,読解材料と同時に音声を呈示した。実験の結果,読み手にとって文章の難易度が高い場合には,読み手の語彙サイズによらず,範読音声があるほうが逐語記憶成績が高かった。2021年度までに実施した研究と併せ,読み手にとって文章が難解である場合には範読音声が読解をサポートし,文章が簡単である場合には範読音声が読解に逆効果である冗長効果が生じること,文章と読み手のバランスについて読み手の語彙サイズでも推定できることを明かにした。 第2に,読み手の黙読スタイルと黙読時の眼球運動との関係を明らかにする実験を行った。参加者は28人の大学生であり,調査によって黙読時に頭の中で文章をすべて読み上げる完全内声化群とそうではない内声化少群に分けられた。実験課題は,短い文章を黙読し,自身が描いたイメージの鮮明性を回答することであった。実験の結果,内声化少群は完全内声化群に比べ,読み速度が短く,黙読中の視線の停留回数が少なく,サッカードが大きかった。イメージ鮮明性には差がみられなかった。 これらの研究から,読み手の黙読のスタイルやスキルによって,音声情報処理プロセスが異なり,有効なサポートに違いがあることが予測できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の3年計画のうち,2年目にあたる 2022年度の主な目的は,第1に,読み能力による範読音声呈示の違いを明らかにし,小学生用の文章刺激を作成すること,第2に,範読・音読時のEVS測定プログラムを作成することであった。 第1の目的について,進捗した点は,文章の難易度を3段階で操作し,範読音声呈示の効果が読み手の読み能力,しかも語彙サイズで推定できることを明らかにしたことである。難易度を3段階で操作したことにより,その影響が体系的に変化することが明らかになった。範読音声呈示が,「読み手に取って難しい文章を読むとき」にのみ効果的であることが実証された。遅れている点は,小学生用の文章刺激が作成途中であることである。 第2の目的について,進捗した点は,EVS測定プログラムがほぼ完成したことである。遅れている点は,現時点では予備実験にとどまっていること,分析方法が確立されていないことである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年計画のうち,最終年度にあたる2023年度には,次の3つの実験を実施する。 第1に,現在作成中である小学生用の文章刺激を用い,小学校1~6年生約200名が,範読・黙読で文章を処理した場合の理解度を比較する。理解度の発達的変化を分析するとともに,読み手にとって難易度の高い文章では範読音声が有効であり,難易度が低い場合には逆効果である冗長効果が出現するという仮説を検証する。の出現次の実験で用いる刺激を選定する。 第2に,読み手の読解力を簡易に測定するためのEVSプログラムを完成させる。具体的には,範読時のEVSを測定し,読み手の黙読の能力が高い場合にEVSが大きいこと,範読音声が速い読みや大きなサッカードを妨害する可能性があることを検証する。 第3に,文章の読解における音声情報の機能を明らかにするため,読み手が自ら頭の中で音声化する(これを内声化と呼ぶ)読みスタイルの有効性を検証する。具体的には,物語文章読解を提示して黙読してもらい,動詞分類課題によって,状況モデルの精緻さの程度を測定する。それにより,範読音声呈示以外の読解支援サポートとして,内声化指導が有効である可能性を検討する。
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