研究課題/領域番号 |
21K18527
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
望月 俊男 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (50379468)
|
研究分担者 |
江木 啓訓 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30422504)
石井 裕 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (30372642)
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
久保田 善彦 玉川大学, 教育学研究科, 教授 (90432103)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 協調学習 / 議論 / 共調整学習 / エージェント / 批判的ディスコース分析 / 生理指標 / 学びの自己調整 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,学習はすべからく協調的・社会的な活動の中で行われ,学びの自己調整(よりよく学ぶために,どのように取り組むべきかを考え、実行すること)は,学習者をとりまく状況や他者との関わりの中でしか達成され得ないとの立場から,個々の学習者が状況や他者との関わりの中で発現する能力を分析し,全員がより望ましい資質・能力を発揮できるように助言する学びのパートナー(エージェント)を開発することが目標である。その目標に向け,状況や他者との関わりの中で現れる言語活動と,感情的な側面を表す客観的なデータをもとに、一人一人の学習の状況に応じた能力・資質の発現に対して、臨機応変に効果的な助言を与えることを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,協調学習において,状況や他者との関わりの中で発現する学習者のパフォーマンスを即時に分析し,学習者が学びの自己調整 (よりよく学ぶために,次に取り組む学習活動を計画し,実行すること)を主体的・即興的に考えられるように助言するエージェントを開発し評価することである。具体的には,協調学習の対話を通した学習場面を対象として,プロ トタイプを構築し,評価することを目的とする。 本年度は,新型コロナウイルス感染症の影響が小さくなったため,前年度に改良を進めたシステムを用いて,エージェントを用いた実験や授業実践を行い,データ取得を行った.エージェントの動きは前年度に検討してきたグループの累積発話比率のシャノンエントロピーを指標とした方法に改良した.その改良の結果、エージェントの動作によって議論中の発話の均衡が促されるなど,期待される効果が一定程度みられることがわかった.一方,前年度に,エージェントが学習者の自己調整・社会的共有調整を促す存在として変化・受容されていくプロセスが重要であると考えられる知見が見いだされたことから,エージェントと学習者間の関係性構築過程を分析するために,批判的ディスコース分析を用いて,エージェントのいる学習者間の協調的議論を分析した.その結果,学習者のエージェントに対する最初の印象は様々で,エージェントの促しに対して無視・反論することもあった.だが,学習者がエージェントの能力と可能性を認識すると,エージェントの促しに従って議論に参加するようになった.このように,効果的な調整の促しを実現するために,エージェントとそれをとりまく状況や文脈をデザインする研究の必要性が見いだされた. これらの研究成果は日本教育工学会全国大会,ヒューマンインタフェース学会研究会,HAIシンポジウム,インタラクション2023にて発表し,国際会議CSCL2023で発表予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,新型コロナウイルス感染症の影響が多少改善し,学習者同士で対話する場面でのデータ取得や試行錯誤が可能になったことから,エージェントを用いた様々な取り組みができるようになってきた.また,令和3年度末に開催した日本教育工学会SIG「協調学習・学習科学」の研究会をきっかけに,批判的ディスコース分析によりエージェントと学習者間の関係性を分析する新しい方向性が萌芽し,この方向性での研究が進展した.一方で,当初予定していた生理指標等を取得して促しに反映する研究については,令和4年9月にヨーロッパ教授学習学会のSIG会議に参加してフィードバックを得たところ,生理指標をどう捉えるかの研究が依然十分進んでいないことなどから,あまりpromisingではないとの助言が得られたほか,生理指標を取得するためのマイクロコンピュータの生産状況が悪く,手元での十分な検討ができていないことが課題となっている.一方で,令和4年度に実施した授業実践のデータ取得・分析と,令和4年度末に招へいしたFreydis Vogel氏(ハンブルグ大学)との研究協議の中で,エージェントとの協調的議論を通した共調整方略の獲得・発揮が促される条件や環境について,一定の方向性が理論的にもデータ的にも見いだされてきた.
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は最終年度にあたるため,エージェントを用いた授業実践を通して,学習者の共調整が促される条件について確認を行う.国際会議CSCL2023における発表とフィードバックを得て,本研究のとりまとめを行う.本研究課題の挑戦的性質を考慮し,当初検討していた生理指標の活用等については引き続き可能な範囲で検討を行い,知見を見いだしていく.
|