研究課題/領域番号 |
21K18545
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
越地 尚宏 久留米工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (90234749)
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研究分担者 |
辻 豊 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (40197687)
森 保仁 佐世保工業高等専門学校, 基幹教育科, 教授 (80243898)
山口 崇 久留米工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (90248344)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | withコロナ新時代 / 双方向実験ノート / 学生実験 / 科学リテラシー / アクティブラーニング / Withコロナ新時代 |
研究開始時の研究の概要 |
理系教育現場では法則の確認や技法習得を目的に学生実験が行われているが、それ故学生にとっては受動的性格を持つ。 評価はレポートが主だが基盤である実験ノートの系統的指導は未実施が多い。しかし実験時の気づき等をその場でノートに記すことは「記録及び思考ツール」の観点から重要でありノート指導を通して論理思考や問題意識を伴うリテラシーの涵養を目指す。 SNS等のICT技術は学生と親和性が高く実験ノートと相補的に積極活用し、学生実験を現在社会で必須の即時的かつ能動的学習体験の場とすることを目指す。 またICT技術を駆使しWithコロナ新時代でのソーシャルディスタンスを意識した実験のあり方も追求し成果の発信を行う。
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研究実績の概要 |
今年度は本校電気電子工学科4年生対象(大学1年相当)の『電気電子実験2』(通年科目)と電気電子工学科5年生対象(大学2年相当)の『電気電子実験3』(半期科目)にて本研究を実施した。今年度は2つの柱に注力した。(1)高等教育機関における“学生実験/実習”はその対象科目/分野の知見や法則等を実験を通して習得するのが目的であり、その意味で本質的に作業的、則ちルーティンワーク的側面を持つ。しかし発想と視点を180°変え、「想定外のことが起こる時代に対応できる技術者」としての発想やスタンスの涵養のため、「実験においてどのようなことが起こり、その対処のためにどのような準備や心構えが必要かを想定し準備する『事前準備用シート』等の作成とそれをグループでまとめる作業を課し、また実験時は常時それを掲示する試みも行った。 (2)今年度もコロナ禍が継続しており、年間を通して何回か感染の大きな波が生じた。電気電子実験はグループ実験であり、同一機器を複数で触る等ソーシャルディスタンスをとることが難しい。そこで実験グループ(通常4人)を『実際に実験室で実験を行う実験チーム2名』と『HR教室にて作業を行う分析・指示グループ(2名)』に分け、その間を『チャット、ファイル共有、ビデオ会議等の機能がある遠隔コミュニケーション支援システムであるMicrosoft Teams 』で繋げてリモート実験を実施した。当初は遠隔実験を行うことに学生の中で戸惑いがあったが、回を重ねる毎に習熟度が増し円滑な実験が行えるようになったと感じる。コロナ禍は、いつかは収束すると考えられるが、この体験は今後増加するであろう理工学分野の遠隔作業の訓練になると同時に、今後多様性や様々な価値観が混在する社会での技術者として必須の素養であると考えられる「簡潔・正確かつ判りやすく他者に伝えるコミュニケーション技法の習得」にも繋がると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は法則の確認や技法の習得を目的に理工系高等教育機関で行われている『学生実験/実習』に関し、未来の科学者/技術者育成の観点から想定される重要性に比して、従来積極的には実施されていなかった「実験ノートの指導」について、実践を通して系統的かつ効率的な指導法について探査すると同時に、学生にとって受動的になりがちな学生実験の視点を180°変えることによって、PBL及びアクティブラーニング的視点を備えた論理思考や問題意識を伴うリテラシーの涵養を目指すものである。その実践の両輪として『紙のノート等の記載を中心とするアナログ的アプローチ』と、『Withコロナ時代を見据えたソーシャルディスタンスも視野に入れたICT活用のデジタル的アプローチ』を本研究の主軸に据えた。アナログ的アプローチは『事前準備用シート』や『振り返りシート』を発案/試行することで学生実験を通して学生のPBL的実践を行うことが出来た。 他方『ICT活用のデジタル的アプローチ』に関しては、4名で構成する実験班を『実際に実験室で実験を行う実験チーム2名』と『離れたHR教室にて作業を行う分析・指示グループ(2名)』にわけそれらを遠隔コミュニケーションツールであるMicrosoft Teamsを通して繋げることにより学生実験をコロナ禍におけるソーシャルディスタンスを担保しながら実施することができた。その際遠隔実験でのソフトハード両面における多くのノウハウを得ることが出来、それを次年度に繋げたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は『Withコロナ新時代のアナログ手法とICTを活用した課題解決型実験ノート指導』と題して以下の取り組みを行ってきた。すなわち(1)アナログ的なアプローチである紙のノートや事前予知シートや振り返りシートを用いて、学生にとっては本質的に受動的な取り組みである学生実験に関し、視点を180°変えることで地球温暖化やコロナ禍、そして今年に入って急速に台頭した対話型AI(人工知能)に代表される従来の経験が通用しない予測不能/想定外の新時代を切り開く科学者や技術者の卵である理工系学生の持つべき資質としての自発的問題意識の涵養と課題解決力の育成を図ってきた。 また(2)のデジタルアプローチとしてはコロナ禍における学生実験を遂行する手法として前述のMicrosoft Teamsに代表されるICT技術を活用した遠隔実験手法を取り入れることで、ソーシャルディスタンスと実験の遂行という、相反した事象を結びつける契機とした。 さて過去2年実際の学生実験を舞台に実証するなかで、多くの知見や学生の要望を聞くことができた。今年度はそれをふまえ以下の取り組みを主柱として実施する。(A)従来の蓄積を元に更なる効率的な運用を試みる。その際可能な限り今後の展開性も考慮し汎用性のあるものを組み合わせることを主眼とする。(B)遠隔実験を継続すると共にICTの持つ速報性や情報共有性を活かし今まであまり顧みられなかった指導者・学生間の情報共有(例えば実験進捗のリアルタイムでの把握等)を試みる。これらの取り組みによりアナログとデジタル双方の特色を効率的に融合させ、新時代の技術者の養成を目指す。
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