研究課題/領域番号 |
21K18560
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 真理 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (20750045)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 言語 / 脳波 / ニューロフィードバック / 経頭蓋電気刺激 / 外国語学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、音韻・文法・意味・語用の全てが関連する英語の冠詞を対象に、脳波に基づくニューロフィードバック (NFB) を与えることで、言語学習が生じるか検討することを目的とする。冠詞のように従来の教授法では学習が難しい言語現象に脳科学の知見を応用し、言語学習への応用・波及効果が期待される研究に取り組む点で挑戦的である。また、従来の「言語処理から脳活動」への研究を、「脳活動から言語処理」へと転換させることで、脳活動と言語処理の因果関係を非侵襲的な手法を用いて実証することも目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は、①外国語学習者に対する脳波・経頭蓋電気刺激同時計測実験、②ニューロフィードバックに用いる脳波成分・解析法の検討、③母語話者に対する脳磁図実験を実施した。 ①日本語母語話者50名に対して、スペイン語の動詞活用を学習する際に、経頭蓋直流電気刺激法により左下前頭回を含む言語野の脳活動を亢進させながら脳波を計測する実験を行った。刺激前後で事象関連電位を比較し、文法判断課題の成績と関係する脳活動を検討した。その結果、文法処理との関連が報告されている事象関連電位P600の振幅が減衰することが明らかとなった。前年度に実施した脳波実験から、母語話者では学習者に比べてP600の振幅が減衰することが明らかとなっており、刺激後に観察されたP600の減衰から、より効率的な文法処理が可能になったことが示唆された。 ②ニューロフィードバックに用いる脳活動の指標を検討するため、脳活動のゆらぎを定量化する指標を提案し、脳磁図、脳波などの各種脳機能計測データに対して適用した。認知処理と連動して脳活動のゆらぎが変化するか引き続き検討を進めている。 ③日本語母語話者40名に対して、日本語のかき混ぜ語順文(目的語・主語・動詞語順)を理解する際の左下前頭回の脳活動を脳磁図により測定した。かき混ぜ語順文では、基本語順文(主語・目的語・動詞語順)に比べて脳活動が上昇することが知られているが、文脈情報を与えると処理負荷が軽減することが報告されている。現在、文脈情報と語順の変化が脳活動に与える影響について分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経頭蓋電気刺激実験と脳波実験の結果を、日本神経科学学会、日本言語学会などの学会で発表し、論文として投稿中である(プレプリントサーバーにて公開済み)。学習者に対する経頭蓋電気刺激実験や脳波実験では、外国語学習に左下前頭回が果たす役割を明らかにできたため、当初の予定以上に進展したと考えている。一方で、ニューロフィードバックに用いる脳活動の指標については、さまざまな指標を探索的に検討する必要があり、当初の計画よりも遅れている。したがって、研究全体としては概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、研究全体としては概ね順調に進展しているが、ニューロフィードバックに用いる指標については難航している。今後はニューロフィードバックに用いる指標の最適化に注力し、脳波実験を進めるとともに、研究成果を論文として取りまとめることにも集中する。
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