研究課題/領域番号 |
21K18562
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
今中 國泰 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員教授 (90100891)
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研究分担者 |
北 一郎 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (10186223)
雨宮 誠一朗 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (20796015)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 比較認知行動科学 / 表象的慣性 / 視覚的予測 / ヒト / ラット / 予測的視覚 / ヒト実験 / 動物実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、移動視標の予測的視覚・表象的慣性(移動視標の数百ミリ秒将来が見える機能: Representational Momentum, RM)が、ヒト特有の高次認知機能なのか動物にも備わる生物学的基盤なのかを、ヒト・動物間の比較認知研究により検討する。 そのため、ヒト(成人)と動物(ラット)共通の視覚反応実験系(タッチパネル上の移動刺激の任意位置消失、その消失位置へのタッチ反応)を構築し両者への実験を行い、ヒト・動物の共通点・相違点を明らかにする。さらに動物の視覚野(低次知覚系)・前頭前野(高次認知系)神経活動の薬理的阻害実験により、表象的慣性(RM)における低次・高次神経活動を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、動く物体の予測的視覚機能である表象的慣性(移動視標の数百ミリ秒将来が見える機能: Representational Momentum, RM: Freyd & Finke, 1984)が、ヒト特有の高次認知機能なのか動物にも備わる生物学的基盤なのかを比較認知科学的に明らかにするため、ヒト(成人)と動物(ラット)共通の視覚反応実験系によるヒト・動物実験を実施し、RMの動物・ヒトの比較検討を行うことを目的とした。
2022年度はラットRM実験を実施した。RM課題では、タッチスクリーン上で水平移動する視覚刺激を左・中央・右の3か所のいずれかで停止・消失させ、その消失点にタッチ(ノーズ・ポーク)させた。予備学習として、①静止刺激へのタッチ、②静止刺激呈示・消失後タッチを学習させ、60~70%の成功率に達した後、RM課題を実施した。タッチ行動促進のため、刺激停止位置に刺激と同一幅の物理的タッチ窓を設置し、さらに刺激停止後から消失までの時間を500ms、1000msとする2条件を設定した。
全ラットの1/4程度、7匹がRM課題遂行可能となったが、刺激消失後の刺激呈示窓へのタッチ試行は全試行数の1/3程度(偶然レベル)で、残りの2/3は刺激移動中のタッチ、刺激停止後消失前のタッチ、刺激非呈示窓へのタッチ、制限時間内にタッチがない非タッチ試行となった。刺激呈示窓への刺激消失後タッチのタッチ誤差は、500ms条件が1000ms条件より有意に大きかったが、この有意差は刺激消失前(つまり刺激呈示中)のタッチ試行でも刺激非呈示(つまり刺激非関連)窓へのタッチ試行でも、いずれの場合でも生じなかった。したがって、刺激呈示窓への刺激消失後タッチでのみ、500msで1000ms条件より有意に移動刺激の将来方向にタッチ誤差が偏倚しており、ラットにおいてはヒトと類似のRMが生じることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画は、以下の3か年のスケジュールで進める計画であった。すなわち、(1)初年度は、ヒト・ラット実験用タッチパネル装置による予備実験、特に動物実験の実施に向けた視覚反応課題に対するラットの遂行行動獲得のためのトレーニング・プロトコルの構築、(2)次年度は、構築した実験系により、ヒト・ラットそれぞれを対象とする表象的慣性(RM)の視覚反応実験の実施、(3)最終年度は、ヒト・ラットの表象的慣性(RM)の知覚認知特性の比較検討および全体的統括である。
「研究実績の概要」に記したように、初年度のトレーニング・プロトコルの検討結果から、ほとんどのラットでは静止刺激タッチ課題が比較的容易にトレーニング可能であるが、表象的慣性実験の必須条件である移動刺激消失後タッチについては、一部のラット(多数のラットのうち1/4~1/5程度)のみが課題遂行可能であり、全般的には実施困難であることがわかった。そこで、その一部のラットを対象に表象的慣性を検討する本実験を実施し、分析を進めた。その結果、ラットにも表象的慣性が生じている傾向が認められた。最終年度は、ラットで見られた実験結果がヒト実験でも認められるか否かについて検討する予定である。したがって、初年度とともに第2年目における研究計画はほぼ予定通りに進んだものといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初計画は、(1)初年度は、ヒト・ラット実験用タッチパネル装置による予備実験、特に動物実験の実施に向けた視覚反応課題に対するラットの遂行行動獲得のためのトレーニング・プロトコルの構築、(2)次年度は、構築した実験系により、ヒト・ラットそれぞれを対象とする表象的慣性(RM)の視覚反応実験の実施、(3)最終年度は、ヒト・ラットの表象的慣性(RM)の知覚認知特性における共通点・相違点の検討および全体的統括である。
初年度・2021年度の計画はおおむね順調に進展し、一部ラットのみではあるが表象的慣性実験の実施が可能となり、そのデータ収集を開始した。次年度・2022年度は、ラットの表象的慣性実験を積み重ね、そのデータの収集が実施でき、表象的慣性の行動特性がラットに認められることを示唆する結果が得られた。最終年度・2023年度は、ラットで見られた刺激停止後500ms、1000ms後に消失する刺激に対するRMと考えられる結果について、これがヒトでも認められるかを検証するため、刺激停止後から刺激消失までの時間(0、167、333、500、667、833、1000ms)を操作し、異なる遅延時間によるRMの変容を実験的に検証する。これらの実験をとおして、ヒト・ラットの表象的慣性の行動特性比較を可能とする十分なデータ収集を行う予定である。さらに、ラット及びヒト実験の結果を国内・海外の学会で発表するとともに、国際誌に論文投稿する予定である
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