研究課題/領域番号 |
21K18566
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
板倉 昭二 同志社大学, 研究開発推進機構, 教授 (50211735)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 社会的カテゴリ / 乳児 / 母子インタラクション / 乳幼児 / ロボット / コミュニケーション / インタラクション / ジェンダー / 人種 / 社会的優位性 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトは、幼い時から、様々な社会的カテゴリーに属しており、そのカテゴリーに応じてフル会をうまく適応させていく。本研究プロジェクトでは、乳幼児が、どのように社会を構成している要素を認知し、ジェンダー(gender)や人種(race)といった社会的カテゴリーに適応していくのかを検討する。また、社会的地位や年齢といったカテゴリー、さらに社会の中での規範となる多数決の原理の理解、個体における社会的優位性や劣位性の理解などの動的社会構造の理解の創発プロセスとメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、乳児における社会的カテゴリの形成のプロセスやメカニズムを明らかにすることを主たる目標とする。2022年度は、母子インタラクション中に、コミュニケーションロボットを導入し、インタラクションの変化や母子の反応の変化を記録した。具体的には、発達科学では古典的なパラダイムともいえる、「Still Face Paradigm: 以下SFPとする」を用いて検討した。SFPは、以下の3つのフェイズからなる。1)母子が通常のインタラクションを持つ、乳児はポジティブな情動、2)母親が、児のいかなる働きかけにも反応しない、したがって、乳児はネガティブな情動を示す、3)母子が1)と同様のインタラクションに戻る、乳児の情動もポジティブに戻る、以上である。 このパラダイムと社会的カテゴリの関係のロジックとしては、2つ目のフェイズ(Still Face)で、ロボットがポジティブな働きかけをしたときに、母親と同じように、児のポジティブな反応を誘発できるかどうかということである。もし、それが可能ならば、自分を心地よくさせるパートナーとして、ロボットをパートナーとして分類した可能性が示唆され、こうした文脈において、乳児が社会的なカテゴリを形成した可能性をうかがわせる。その結果、逆にロボットが介入した場合に、心拍やストレス度が高くなった。本研究結果の一部を、ハンガリーで開催されたBCCCD国際学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性別や人種といった、生物学的なカテゴリも極めて重要な社会的カテゴリである。しかしながら、生物学的カテゴリを超えた、文脈による社会的カテゴリをもヒトは創出する。本プロジェクトでは、実験で用いたStill Face Paradigmのような状況での、自身の情動状態を直接的に操作する関係を作るエージェントを導入することで、それが社会的カテゴリとして成立する可能性を探った。すなわち、Still Faceのフェイズで、ネガティブ情動に陥った乳児を、再びポジティブ情動へと誘導することができれば、養育者(母親)と同様に、信頼に足る社会的パートナーとしてのカテゴリに分類される。 なお、このパラダイム実施中に、顔の血流パターンを計測し、種々の生理学的データを取得するために、経皮光学イメージング法を導入した。その結果、コミュニケーションロボットが児とのインタラクションに参加すると,児の心拍数とメンタルストレスインデックス(心拍変動成分から測定された指標)がともに増加した。つまり、コミュニケーションロボットとのインタラクションが母親のstill face以上にストレスになる可能性のあることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果は、Still Face Paradigmを用い、そこにコミュニケーションロボットを導入することにより、母子インタラクションの質や、母親及び乳児の反応の変化を、経皮光学イメージング法により記録した。その結果、コミュニケーションロボットが児とのインタラクションに参加すると,児の心拍数とメンタルストレスインデックス(心拍変動成分から測定された指標)がともに増加した。つまり、コミュニケーションロボットとのインタラクションが母親のstill face以上にストレスになる可能性のあることが示唆された。しかしながら、ここで用いたコミュニケーションロボットが、本当にコミュニケーションロボットとして機能したかどうかが問題となる。乳児にとって、ロボットが真にコミュニケーションのパートナーとなるためには、ロボットがコミュニカティブな存在として認識される必要がある。そのためには、ロボットが、乳児に対して社会的随伴性を備えた存在となることが必要である。例えば、乳児がコミュニケーションロボットに働きかけた場合、適切な間で適切な反応を返すなど、乳児との直接的な社会的な関係を築くことがその一因となるかもしれない。 今後の方策としては、乳児とロボットの社会的関係を築くような場面を導入することにより、ロボットを母親と同様、自分をポジティブな情動に導く存在としてのカテゴリ化が可能となるかもしれない。
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