研究課題/領域番号 |
21K18594
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 教授 (00192526)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 非線形異常ホール効果 / 有機導体 / ディラック電子系 / 電荷秩序 / ドメイン / 非線形異常エッチングスハウゼン効果 / ドメイン制御 |
研究開始時の研究の概要 |
有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の弱い電荷秩序状態はギャップの開いたDirac電子系で、有限のBerry曲率双極子によりゼロ磁場下で電流誘起の異常Hall効果や軌道磁化が期待される。しかし現実の結晶では2種の電荷秩序ドメインが存在し、これらの効果を打ち消してしまう。本研究の目的は、片方の電荷秩序ドメインのみを選択的に形成させる手法を確立し、隠れた非線形異常Hall効果を顕在化させることである。そのために磁場中で電流を流して試料を徐冷しドメイン核を電流誘起軌道磁化を用いて配向させる。このドメイン制御手法の確立と有機導体初のトポロジカル輸送現象の観測が本研究の意義である。
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研究成果の概要 |
有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の弱い電荷秩序状態は、反転対称性の破れたギャップの開いた傾斜Dirac電子系で非線形異常Hall効果の発現が期待される。しかし2種ドメイン間での相殺により観測は困難と予想される。そこで片方のドメインを選択形成させる電流磁場中冷却法で非線形異常Hall効果の観測を目指した。(1)通常冷却でも非線形異常Hall効果の観測に成功した。これはドメイン比率の不均衡を意味する。(2)電流磁場中冷却法によるドメイン選択の有意な効果は認められなかった。(3)非線形異常Hall効果の熱電アナロジーである非線形異常Ettingshausen効果を発見した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
トポロジカル伝導現象は基礎・応用の観点から現代物性物理学の重要なトピックスの1つである。一方、有機分子性結晶は単純な電子構造を持ち、物質設計や物性制御の舞台を提供してきた。本研究は、有機分子性結晶においてトポロジカル伝導を初めて発現させたという意義を持つ。電流磁場中冷却法の有効性は確認できなかったが、観測を困難にするドメイン問題も大きな障害にはならないことが明らかとなった。さらに対応するトポロジカル熱電効果である非線形異常Ettingshausen効果の発見を通じ、トポロジカル物性物理の発展にも貢献できた。
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