研究課題/領域番号 |
21K18599
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片山 尚幸 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50623758)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 格子ダイナミクス / 放射光X線 / 構造解析 / 量体化 / ダイナミクス / EXAFS / 短距離秩序 / 局所構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
二次元三角格子系LiVS2では、低温でバナジウムが自己組織化的に凝集し『三量体化』を生じる。高温では三量体は消失するが、代わりにバナジウムは有限の相関長を持つジグザグ鎖の秩序を局所的に形成し、秒のスケールで配向を変えながら揺らいで現れるダイナミクスを示すことが明らかになった。これは、ソフトマターの一種である柔粘性結晶に分類される状態である。本研究では、LiVS2の大型単結晶試料に対してX線吸収分光測定を利用した独自アイデアに基づく時分割測定法を適用し、ダイナミクスに係る諸物理量(相関長・タイムスケール・温度依存性)を明らかにする。
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研究成果の概要 |
無機ソフトマターの性質を持つバナジウムカルコゲナイドの格子ダイナミクスを、偏向X線を利用した時間分解EXAFS測定で捉えることを目的としてSPring-8 BL36XUにおける実験を行った。実験の結果、およそ0.6秒周期でスペクトルに変化が現れていることを突き止めた。これは期待する格子ダイナミクスを捉えているようにも思えるが、予想に反してスペクトルの変化が周期的に現れていること、得られたスペクトルに温度依存性が見られないこと、などの特徴が現れており、これは予想には反する結果であった。現在は解析を進めており、今後はこの特徴が本質であることを明らかにし、論文投稿に向けて準備を進めたい。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ソフトマター材料研究の主役は有機材料であり、遷移金属を主体とした無機材料はソフトマター物理の舞台としては捉えられてこなかった。本研究は、ソフトマター材料の物質的幅を広げ、従来材料とは一線を画する新たな機能性材料を提供するという意義がある。そもそも、対象となる適当な物質系がないことから、こうした無機ソフトマターのダイナミクスを捉える確立した実験手法は存在せず、今回の実験では放射光X線を用いた独自手法を考案し、実験実施している。得られたスペクトルの解析は現時点で途中ではあるものの、手法そのものの有効性・妥当性は示すことに成功し、同種実験を利用した新材料開発の道筋をつけることができた。
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