研究課題/領域番号 |
21K18607
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70251486)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 物性物理 / スピントロニクス / 低温物性 / 量子流体固体 / ヘリウム / スピン流 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、液体ヘリウムにおけるスピントロニクスの開拓を目指し、新しい実験手法を開拓する。液体3Heは核スピン1/2を持ち、常流動と超流動状態の両方でスピン流を生じる。白金容器壁に沿って3Heを流すと、速度勾配で生じる渦度が核スピン流に変換される。このスピン流が白金壁に浸入して生じるスピンホール電流の観測を試みる。これはヘリウムの流れを電気的に検出する挑戦的な試みである。またスピンのない4Heに3Heを混合した系でも、スピン流や強磁性渦の検証を試みる。将来はこの逆過程、すなわちスピンホール電流から核スピン流への変換を実証することで、超流動体の電気的制御の実現と、量子情報技術への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、液体ヘリウムにおけるスピントロニクスの開拓を目指して、液体3Heおよび3He-4He混合液中で渦度生成により誘起される3He核スピン流を、白金に代表される金属壁中の電子スピンホール電流に変換する技術の開発を行うものである。 2022年度は、2021年度に続いて本研究を行うための希釈冷凍機装置の開発を行った。本研究の実験には、液体3Heおよびおよび3He-4He混合液が十分にフェルミ縮退する10mK以下の低温が必要となる。このような超低温度は希釈冷凍機、または希釈冷凍機と核断熱消磁装置の組み合わせにより実現可能であるが、近年の液体ヘリウムの入手難により、従来の冷凍装置の運用が困難となった。このため、現有の希釈冷凍機をパルスチューブ冷凍機と結合させて、無冷媒希釈冷凍機として動作させることを試みた。希釈冷凍機ユニットを4K程度まで予冷する機構として、ヘリウムガスを循環する装置の開発を行った。21年度までの装置を全面的に作り直し、4Kで1.5Wの冷凍能力を有するGM冷凍機を2台装着した装置を新たに開発した。現在その冷却試験を開始したところである。 スピン流検出実験については、液体の流速と金属壁として用いる白金膜の厚みを検討して具体的な実験条件を決定し、それに基づいたスピンホール電流の詳細な見積と実験装置の設計を行った。実験装置としては、超流動特性の測定に用いられるねじれ振動子の容器壁を白金膜でコートして、ねじれ振動で誘起される振動流によりスピン流を生成する手法を計画している。さらに、多孔性を有する金属を液体ヘリウムの流路に用いることで、渦度および乱流状態を生成するという新たな着想を得た。この方法におけるスピン流検出の可能性について、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、液体ヘリウムを使用しない無冷媒希釈冷凍機を用いる必要があり、その製作に時間が費やされている。そのためスピン流検出の実験装置製作には至っていない。従って進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
無冷媒希釈冷凍機の動作試験を成功させた後、スピン流検出装置の製作を進めていく。また、PrNi5核断熱消磁装置の製作も並行して行う。多孔体を利用した渦度生成とスピン流検出についても装置製作を進める予定である。
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