研究課題/領域番号 |
21K18620
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
庄司 主 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00280602)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 大型ヘリカル装置 / 高速カメラ / 不純物ダスト落下装置 / 周辺プラズマ / ステレオ視計測 / ダスト輸送シミュレーション / 不純物ダストドロッパー / ダスト粒子 / 大型ヘリカル装置(LHD) / ダスト / エルゴディック領域 / ダイバータ / 熱負荷低減 / 画像計測 |
研究開始時の研究の概要 |
核融合炉の実現を妨げている課題として、高温のプラズマと真空容器壁とが直接接する場所(ダイバータ部)にかかる熱負荷が高すぎることがある。これを解決するために、不純物の気体をダイバータ部付近に大量に放出させることによって、ダイバータ部の熱負荷を下げる試みがなされてきた。ただし、この方法ではダイバータ部だけでなく、高温プラズマの温度も低下させてしまうことが大きな欠点となっている。本研究の目的は、不純物の固体の粒を用いて、高温プラズマの温度を低下させることなく、ダイバータ部にかかる熱負荷を大幅に低下させる新手法を見出すことである。
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研究実績の概要 |
2022年度中においては、プラズマ計測用ステレオアダプタとイメージガイドを新たに製作して、大型ヘリカル装置の周辺に設置されているプラズマ監視カメラ用耐放射線ラックの内部に設置するとともに、既存の高速カメラに接続できるようにした。さらに、既存の耐放射線イメージファイバーの布設経路を変更することによって、不純物ダストドロッパーが設置されている上部ポートの直近に2箇所のダスト観測用ビューポートを確保・整備した。これにより、不純物ダストドロッパーから大型ヘリカル装置のプラズマ周辺部に落下するダストの3次元的軌道とダストの溶発位置とその過程を高い時間分解能で観測できるようになった。 高速カメラを使用して、様々な実験条件において観測を行ったところ、プラズマ周辺部におけるダストの軌道と溶発位置がプラズマの密度に依存して大きく変化することが分かった。一方、プラズマの密度が同じであるにもかかわらず、溶発位置がトーラス外側方向に移動するという興味深い現象を観測した。今後、これらの実験結果をダスト輸送シミュレーションコード等を用いて解析を進めていく予定である。 また、2022年度における最新の研究成果を、第25回制御核融合装置におけるプラズマ表面相互作用に関する国際会議(6月13日~17日、オンライン)、第41回シミュレーション技術に関する国際会議 (8月31日から9月2日、オンライン)、第6回プラズマ物理に関するアジア・太平洋国際会議(10月9日~14日、オンライン)、第31回国際土岐コンフェレンス(11月8日~11日、オンライン)、第39回プラズマ・核融合学会年会(11月22日~25日、富山国際会議場(富山市))に参加して発表した。さらに、Nuclear Materials and Energy誌とPlasma and Fusion Research誌に論文を投稿し、その後、出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プラズマ計測用ステレオアダプタ等を新たに製作することによって、不純物落下装置から投入された各種の不純物ダストの軌道および、ダストの溶発位置を高い時間分解能で計測することができた。これにより、プラズマ周辺部におけるダストの軌道と溶発位置がプラズマの密度に依存して変化することが分かった。また、プラズマの密度が同じであるにもかかわらず、溶発位置がトーラス外側方向に移動する場合があるという興味深い現象も観測できた。今後、これらのダストの投入によって見いだされた現象を各種シミュレーションコードによって詳しく解析する予定である。 ダストの軌道等の観測には成功したが、当初の研究計画で期待していた「周辺プラズマ(エルゴディック領域)中への不純物ダストの落下によるダイバータ板上への熱負荷の低減」の明確な実験的証拠は今のところ観測されていない。ダイバータ板上の熱負荷を低減させるために、不純物ダストの落下率を増加させると、プラズマ中の放射輝度が過度に上昇してプラズマの定常的な維持が困難になり、放射崩壊が発生して放電が終了してしまうことが分かった。プラズマ周辺部のエルゴディック領域で溶発したダストに含まれている不純物は、そこでイオン化されて磁力線に沿ってプラズマ中に広がると考えられる。大型ヘリカル装置に取り付けられている可視分光器による測定結果の時間的変化から、不純物イオンは主プラズマ閉じ込め領域の中に徐々に侵入していることが確認された。放射崩壊の発生を防ぐ為には、不純物イオンの主プラズマへの侵入を大幅に抑制する必要がある。このことから、2023年度においてはプラズマ周辺部に大きな磁気島を形成して、その中にダストを投入することで、この問題を解決することを試みる予定である。 以上の理由から、2022年度における本研究課題の進捗状況を「(3)やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後、不純物ダスト落下装置から投入したダストによって、ダイバータ板上の熱負荷の低減を安定に維持することを試みる。大型ヘリカル装置にすでに設置されている外部摂動磁場コイルを使用することによって、プラズマ周辺部のエルゴディック領域に大きな磁気島を作り、その中にダストを投入する実験を行う予定である。これまでに大型ヘリカル装置で行われた不純物ペレットを入射した実験結果によると、磁気島の中で溶発・生成された不純物イオンは、それ以外の領域で生成された場合と比べて、より長い時間磁気島の中に留まる事が分かっている。このことから、実験条件を最適化して、磁気島の中にのみダストを投入し続けることができれば、不純物イオンは長い時間そこに留まり、主プラズマに侵入することなく、周辺プラズマの中でのみ不純物による放射が発生するはずである。その結果、主プラズマに悪影響を及ぼすことなく、ダイバータ部の熱負荷を大幅に低減できると期待される。 シミュレーションによる解析も同時に進める。既存のダスト輸送コードに、周辺プラズマ中の各種不純物イオンによる流れの効果を考慮する改良を施す。既存のコードでは、「ダストの軌道と溶発位置がプラズマの密度に依存して変化する現象」を説明できることは分かっている。ただし、「プラズマの密度が同じであるにもかかわらず、溶発位置がトーラス外側方向に移動する現象」は説明できていない。上記の改良によって、この現象を矛盾無く説明できる可能性があり、そのための解析を進めていく。 2023年度では、第19回核融合装置における周辺プラズマ理論ワークショップ、第42回シミュレーション技術に関する国際会議、第40回プラズマ・核融合学会年会および、第7回プラズマ物理に関するアジア・太平洋国際会議に参加して、本研究の最新の成果を発表するとともに、関連する最新の研究動向に関する情報収集を行う予定である。
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