研究課題/領域番号 |
21K18623
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90402768)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 暗黒物質 / キセノン検出器 / TPC / 宇宙素粒子 / ニュートリノ |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙には暗黒物質が満ちていると考えられ、過去30年間にわたり探索実験が行われてきた。理論的に予想されるかなりの領域は探索されたが、未だ見つかっていない。現在最も感度のある検出器はキセノンを使ったものであり、本研究は今後世界で一つしか建設されないであろう超大型キセノン検出器による実験で残る領域を探索可能とする新たな手法の開発を目的とする。具体的にはキセノンにアルゴンやネオンといった異なる希ガスを混合した検出器の開発を行う。これにより、軽い暗黒物質への感度を上昇させたり、バックグラウンドとの識別能力を高めたりすることを期待している。
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研究実績の概要 |
今年度は主に液体キセノン中での針電極による電荷増幅の実証を行った。昨年度開発したプロトタイプの電極は液体窒素中でのテストにより、冷却に伴う機械的な応力に対する堅牢性が確認された。そして、まず窒素ガス中での放電に対する耐久性を確認するための電極のテストを行った。最初のテストでは、電気放電なしに必要な電圧を印可できることを確認したが、この測定に基づき、電極設計の改良を行い、針の長さ15mmに短くし、先端部の直径を50ミクロンへ小さくした。そしてこの改良されたプロトタイプの電極を液体キセノン中でテストした。液体キセノンの温度と圧力を安定にコントロールしたセットアップにおいて、241Amを用いたα粒子線源を導入した。その結果、電極へ2kV以上の電圧で電子の増幅からのS2信号が得られ、最大6kVの電圧までS2信号の増幅を確認した。これは、細いワイヤーや従来のマイクロパターン検出器構造を使用しない液体キセノン中の比例増幅の世界初の実証であり、論文は現在査読中となっている。一方で、液体キセノン中での直接のシンチレーション信号であるS1とS2の間の時間の分布をみると、二つのピークをもった構造が確認された。おそらく電極と241Amとの間のジオメトリによって形成された電場で、電荷増幅が発生されるところが2か所できてしまっているか、針の先端の形状が設計通りに形成されていない可能性があるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガスの混合試験の前に液体キセノン中での電荷増幅を初めて確認し、とても重要なマイルストーンを達成した。コロナ禍もあけ、イギリスから共同研究者も自由に出張できるようになって実験も進展できており、引き続き電極と混合ガスの開発に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
まずは観測されたS1とS2の時間分布に存在する二つのピーク構造の原因の解明に取り組む。針の先端を顕微鏡で確認したい。そして次の段階としては、電荷増幅に成功した電極の拡大を検討する。ガスの球形比例カウンターで使用されているようなウニ針状の増幅構造をもった多電極構造の実現に取り組む。ガスの純度だけでなく、電極や周囲の検出器表面の汚染レベルの抑制や、将来液体球状検出器であるXMASSに組み込むための材料の放射性不純物の調査なども必要である。
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