研究課題/領域番号 |
21K18626
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川村 静児 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40301725)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 重力波 / レーザー干渉計 / 周期的無重力 / 一般相対性理論 / ブラックホール / ブラックホール連星 / 一般相対性理論の検証 |
研究開始時の研究の概要 |
重力波観測においては低周波帯での観測が重要である。例えば、中間質量ブラックホール連星の合体からの重力波を低周波帯で精密に観測することで、一般相対性理論の強力な検証が可能となる。しかし、地上では地面振動や懸架の熱雑音のため、高感度の実現は期待できない。そこで、我々は、干渉計の鏡を周期的に自由落下させ、低周波帯の感度を飛躍的に高める手法を開発する。我々は、この周期的無重力干渉計型重力波検出器のプロトタイプを開発し、本手法を次世代重力波検出器に用いた時に、どの程度の精度で一般相対性理論の検証ができるのかを見極める。また、実際の観測も行い、低周波帯における世界最高レベルでの重力波観測も行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、干渉計の鏡を周期的に自由落下させ、地面振動雑音と懸架の熱雑音を取り除き、1~10Hzの低周波帯において感度を飛躍的に高める、いわゆるジャグリング干渉計型重力波検出器を開発することである。これにより、例えば、ブラックホール連星の合体前後に発生する重力波の低周波帯での精密な観測を行うことにより、強重力場における一般相対性理論の検証も可能となる。 今年度は、理論面においては、鏡が無重力状態になっている各セグメントのデータから初期位置と初期速度のランダム性を差し引く、いわゆるdetrendの手法によって、ジャグリング周波数より低い周波数で、重力波信号と雑音の関係がどのように変化するかについての詳細な検討を行った。また、周囲の物体の自然な動きが引き起こす鏡の位置での重力場の揺らぎと、ジャグリング周波数で上下運動する鏡の重力場変化とのコンボルーションの効果についても検討を行った。 実験面においては、着座させた鏡の入った真空容器をリニアステージによって上下に振動させ、鏡が実際に無重力状態になることを確認した。ただし、リニアステージの動きの精度が悪いため、鏡の毎回の投げ上げによって鏡の角度が大きく変化し、マイケルソン干渉計としての動作が保持できないことが判明した。そこで、投げ上げ方式でなく頂点からの自然落下方式に切り替えた。これにより、無重力状態での鏡の動きはかなり小さくなり、干渉計のコントラストを維持できる状態までかなり近づけることができた。また、レーザー光の光ファイバーからの出射部は上下運動をする真空容器に固定されているが、そこの部分の振動により、レーザービームの角度揺れが生じることが判明した。また、リニアモーターの上下運動により、真空容器全体の揺らぎも問題となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面においては、detrendの手法によって、ジャグリング周波数より低い周波数で、重力波信号と雑音の関係がどうなるかについての詳細な検討を行うことができた。また、周囲の物体の自然な動きと鏡の上下運動の関係についても検討を行うことができた。したがって、理論面に関しては当初の計画以上に進展しているといえる。 実験面においては、鏡が実際に無重力状態になることを確認できた。ただし、鏡の投げ上げによって鏡の角度が大きく変化したため、自然落下方式に切り替え、鏡の動きをかなり小さくすることができた。しかし、ジャグリング干渉計のコントラストを維持できるほどではなく、その結果、無重力鏡による干渉計の動作を実現するまでには至らなかった。したがって実験面に関してはやや遅れているのは事実であるが、初年度にリニアステージの調達が大きく遅れたことを考慮すると、おおむね順調に進展しているといえる。 以上の状況により、全体としてはおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
理論面においては、ジャグリング周波数より低い周波数での、重力波信号と雑音の関係についての詳細な検討をさらに進める。具体的には重力波信号と雑音の信号雑音比をどのようにして維持するかについて、さまざまな手法を用いて検討を行う。 実験面においては、鏡の自由落下時の角度変化をピエゾ素子を用いて抑える。具体的には、鏡を3つのピエゾ素子の上に着座させ、頂点での短時間の停止の後、3つのピエゾ素子を同時に瞬時に縮小させる。そして、鏡が無重力状態になった直後、リニアステージを下方に動かして鏡とピエゾ素子の間を3mm程度に保って鏡に自由落下運動をさせる。また光ファイバーの出射部を真空容器によりしっかりと固定するなどの対策を講じる。そして最終的にジャグリング干渉計の動作を実現する。次に2つの4割光検出器で受けた干渉光の信号を取得し、それを適切なデータ解析を施すことにより、鏡の変位信号を得る。これらの結果から、ジャグリング干渉計の特性を評価し、問題点を洗い出す。
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