研究課題/領域番号 |
21K18631
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
津野 総司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30451834)
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研究分担者 |
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
武田 彩希 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40736667)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 半導体検出器 / メモリ / SEU / メモリチップ / 放射線 / 高エネルギー荷電粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、Single Event Upset (SEU)を利用した全く新しい動作原理で作動する半導体検出器の開発を行うものである。本来、悪玉であるSEUを積極的に引き起こすメモリ回路を利用する。これは従来の半導体検出器ではできなかった微細化を可能とし、従来の検出器に比べて100倍以上の位置分解能と安価な検出器が可能となる。高額な半導体の実験機材に限られていた研究の裾野を大きく広げるという点でも画期的である。本研究の目的は、このアイデアに基づいた新規検出器開発の原理実証試験を行う萌芽期の研究である。
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研究実績の概要 |
当該研究の目的は、商用のSRAMメモリチップを応用して、荷電粒子に対する新しい放射線検出器を開発することである。昨年度は、単層のSRAMメモリチップの荷電粒子に対する検出効率を測定した。先行研究により、SRAMに印加する動作電圧を大きく下げるとSEUによるビットフリップの確率(つまり、検出効率)が冪乗で上昇することが報告されている。200Mbqのストロンチウム線源を用い、印加電圧を変えながら、SRAMチップに照射を繰り返し、印加電圧に対して、約1%の検出効率を測定した。しかし、1%の検出効率では測定器として機能しない。しかしながら、印加電圧を大きく下げると自然にビットフリップを起こす確率も必然的に増加する事を利用して、印加電圧の代わりに、この自然にビットフリップを起こす事象をノイズと規定し、ノイズに対する検出効率を算出すると、おおよそ、20%まで検出効率が上昇することを確認した。 当該年度は、ノイズに対して、どこまで検出効率が上昇するのか、定量測定を行うため、数度にわたり照射試験を行った。しかしながら、商用のメモリチップを遥に規定外の定電圧領域で動作させるため、チップの個体差や環境変化による影響が非常に大きく、環境制御を改善する処置を行ってきた。 当初の予定では、専用の半導体検出器の設計を行う予定であったが、まずは、多層構造のSRAMチップでも同様の試験を行うことが先決であると判断したため、単層回路で試験をしたものと同様の回路設計を行い、照射試験を繰り返した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に於ける原理実証試験は、概ね実証したが、当該研究費の使途に関しては、大幅に遅れている。当初の予定では、我々は学術系の半導体プロセスを利用することを目指していたが、昨年度は、予定していたプロセスが延期されため、予定委通り研究費を使用できなかった。一方で、照射試験の結果から、想像以上に環境変化に脆弱であることが分かったので、引き続き単層メモリチップに対する環境依存性を測定し、また、多層構造でもどれほど検出効率が得られるのか、また、どれおど環境耐性が得られるのか、先に検証することにしたため、昨年度は、研究費を使用せず、当該年度に使用することにした。
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今後の研究の推進方策 |
単層メモリチップの照射試験の結果から、発熱などによる温度変化や接地対策に大きく影響されることが分かったので、当初予定していた学術系の半導体プロセスの推進を止めて、まずは、多層構造のメモリチップに対して同様の照射試験を行うことにする。
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