研究課題/領域番号 |
21K18644
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
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研究分担者 |
西山 竜一 東京大学, 地震研究所, 助教 (10835101)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 超伝導重力計 / 地震即時重力変化 / 重力水平勾配 |
研究開始時の研究の概要 |
地震が起きると,地球の重力場は変化する.その変化は,震源断層が動き始めると同時に光速で伝搬するので,それを即時に検出することができれば,弾性波が到達する前に地震の発生を検知し,震源についての情報を得ることができる.本研究では,こうした「地震即時重力変化」の問題に,2台の超伝導重力計を用いた重力水平勾配の精密観測からアプローチする.超伝導重力計は,超伝導コイルによる磁気浮上を利用した動作原理に基づき,きわめて高い感度と安定性を実現した重力計である.松代観測点(長野県)において観測を実施し,地震即時重力変化の観測手法を確立することを目指す.
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研究実績の概要 |
2023年度は,長野県松代で稼働中の2台の超伝導重力計の維持を行うとともに,絶対重力測定との比較による精密な感度検定などを行った.絶対重力測定は,2023年6月23日から26日にかけて行われた.気象などの条件に恵まれたため,約25,000ドロップの標準偏差が約4.2マイクロガル,平均値の標準誤差としては0.027マイクロガルという,非常に高い精度を達成した.これは,一地点における絶対重力測定結果としては,おそらく国内では最高レベルの精度である.このデータを用いて,2台の超伝導重力計の感度検定を行った.潮汐変化が小さい時期にあたっていたものの,絶対重力測定のばらつきが小さいことにより,2台の超伝導重力計ともに約0.06%の相対精度でスケールファクターを決定することができた.これらの結果について,論文にまとめた(測地学会誌,受理ずみ).超伝導重力計の精密な感度決定ができたことで,2台の記録を厳密に比較することが可能となった.一方,CT #036には,リアルタイムシステムをベースとしたオリジナルの高速データ収録システムを導入した.これは,超伝導重力計のためのデータ収録システムとしては,精度の点において現状で考えられる最高のものであり,オプションで高レートでのサンプリングが可能である.時定数が短く,浅いフィルターの出力を,このシステムにより20Hzのレートで収録することを開始した.以上のような作業を進めていたところ,2024年1月1日に能登半島でM7.6の地震が発生した.地震波のP波が松代に到達する直前に,2台の超伝導重力計の記録に見慣れない変化が現れていることがわかった.地震即時重力変化の信号としては大きすぎるようであり,その原因について慎重に解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
そう広くない観測室内で2台の超伝導重力計を動かしている関係で,廃熱処理のため扉を常時開放することにした.これにより,室温の異常な上昇は防ぐことができたが,坑内の湿気が入って湿度が上昇し,2台ともにデュワーネック部の結氷の問題が深刻になった.2台ともに機器ノイズが最小であるような時期が限られることとなり,応答特性や時刻精度などの分析が思うように進んでいない.
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今後の研究の推進方策 |
高い湿度によるデュワーネック部の結氷については,CT型では約4か月,iGrav型では約6か月ごとに冷凍機を外してクリーニングをすれば良いことが,経験的にわかってきた.この作業は,かなりの量の液体ヘリウムを蒸発させてしまうため,本来はなるべくやらない方が良い作業だが,2台の重力計が同時にベストの状態に保たれている期間を確保するため,作業サイクルを計画的に組むようにしたい.2024年1月1日の地震については,既存のモデルに限らず,さまざまな可能性について検討していきたい.
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