研究課題/領域番号 |
21K18679
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | グラフェン / 酸化グラフェン / 層状化合物 / トライボロジー / 分子動力学 / 反応力場 / マテリアルズ・インフォマティクス / 水 / 摩擦 / 分子シミュレーション / マテリアルズインフォマティクス |
研究開始時の研究の概要 |
固体潤滑剤(層状化合物)に関しては,現在に至るまで,不整合接触において超潤滑が生じるという理論が低摩擦理論の基本となってきた.グラファイトの摩擦現象は移着片と基材の間で生じる.そこで,本研究では以下の計算物理学的アプローチにより本現象を解明する.雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立,疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築,共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張,連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算,マテリアルズインフォマティクス (MI) による最適組成の探求.
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研究実績の概要 |
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:水分子集団を含む移着片の摩擦発現過程を解析する手法について.さらに酸化グラフェン系に拡張した.酸化グラフェン中に水分子集団を挿入する解析を実施し,グラフェンと酸化グラフェンとでは摩擦機構が大きくことなることがわかった. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:酸化グラフェン系において,水素結合ネットワーク解析を実施したところ,官能基を起点に水分子集団が結合していることが明らかとなった. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:ニューラルネットワークポテンシャルを用いた ZnDTP の解析を実施し,鉄表面においてトライボ化学反応が生じることがわかった. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:実験との連携としては,酸化グラフェンの低摩擦機構について,兵庫県大木之下教授らの解析している酸化グラフェンの摩擦挙動について解析を実施した.上述のように,水素結合ネットワークの形成が低摩擦発現に寄与することが推察された. (5) MIによる最適組成の探求:MI の適用範囲をトラクション・フルードに適用して,機械学習による摩擦係数の予測について明らかにした.この手法を他の摩擦系についても適用するが,その前に分子シミュレーションとの連携について模索する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:グラフェンの低摩擦における雰囲気中の水の寄与については,これまで全く議論されてこなかった.さらに,酸化グラフェン系に拡張できつつある. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:材料近傍における水の寄与については,新学術領域「水圏機能材料」で提案されているように,材料科学の新しい着眼点であり,この観点からも本研究課題は寄与できると考えられる. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:エンジニアリングの観点としては,鉄との混合系について議論することができた意義は大きく,さらに酸化グラフェン系や MoS2 系にも拡張しようとしている. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:上記と関連するが,酸化グラフェンについても幅広い適用対象が存在する.一方で,層状化合物として通常のグラファイトと同じ熱回避運動による低摩擦機構であるかどうかが判らなかった.この点について,両者が異なるということが判りつつあり,層状化合物の科学として有意義であると考えられる. (5) MIによる最適組成の探求:本系は雰囲気分子を含む潤滑系であるため,MIの適用は困難であるが,潤滑油系においてまずは MI による摩擦係数予測を成功しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:研究開始時に,酸化グラフェンにおいて大きな進展があったため,これを含めたユニバーサルな手法開発としたい. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:水環境下におけるグラフェン移着片の挙動について論文化を現在進めており,必要に応じて解析を増やす予定である. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:酸化グラフェンに加えて,NNP による ZnDTP に加えて MoDTC の解析を実施する.これにより,MoS2 形成について調べる. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:酸化グラフェンの実験との連携をさらに深める.また大規模実証計算を準備する. (5) MIによる最適組成の探求:本系におけるMIの実現を目指して,潤滑油で手法開発を進める.
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