研究課題/領域番号 |
21K18732
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
矢野 憲一 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 教授 (70311230)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ナノ秒パルス高電界 / 生体応答 / 白血球 / 活性化 / 好中球 |
研究開始時の研究の概要 |
白血球の大多数は好中球と呼ばれるタイプであるが、これをナノ秒パルス高電界で刺激すると、細胞が活性化されて、抗菌作用を持つ成分が細胞内部から細胞外へと放出される。本研究では、ナノ秒パルス高電界による白血球活性化を効率よく行うための手段を確立することを目的とし、刺激の至適条件の確立と、白血球サンプルの連続刺激を可能とする装置の作製を行う。近年、献血は成分毎に分画されて用いられることが多いが、白血球は輸血等には使用されない。本研究により、クリーンな刺激であるナノ秒パルス高電界を用いて、白血球から有用物質を調製するための新手法を確立する。
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研究実績の概要 |
ナノ秒パルス高電界は、有意な熱の発生を伴わずに高エネルギー状態を達成することができるというユニークな特徴を持つ新技術であり、生命科学をはじめとした幅広い分野での利用が期待されている。本研究ではナノ秒パルス高電界を用いて白血球を効率良く活性化するための電気的・化学的諸条件を検討するとともに、これまでよりも大きな容量のサンプルを処理する方法を確立することを目的としている。昨年度は、ナノ秒パルス高電界の総エネルギーを一定とした上で電界強度と処理回数を変化させることで、白血球活性化に必要な電界強度にしきい値があることを明らかにした。これまでにナノ秒パルス高電界による白血球活性化には細胞外カルシウムの存在が必須であることを示してきたが、本年度は電界強度のしきい値とカルシウムの関連について詳細に検討した。ヒトHL-60細胞を最も主要な白血球のタイプである好中球へと分化させて実験に使用した。細胞を様々な濃度のカルシウム存在下でナノ秒パルス高電界処理し、好中球が活性化された際に誘起される反応である好中球細胞外トラップ形成(NET形成)を解析した。その結果、細胞外カルシウム濃度を上昇させた場合でも、ナノ秒パルス高電界によるNET形成に必要な電界強度のしきい値に大きな違いは生じなかった。このことは、ナノ秒パルス高電界によるNET形成は、カルシウムの細胞内流入と一定以上の電界強度の双方が必要であることを示している。従来、ナノ秒パルス高電界の生体作用はカルシウムの細胞内流入が主要因であるのか、それともカルシウム流入と電気的作用が独立に働いているかについては不明であった。上述の結果は、カルシウム流入とは独立に電気的作用が必要であることを示す重要な新知見と言える。さらに本年度は、より大きな容量のサンプルをナノ秒パルス高電界で処理するための手法について検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ナノ秒パルス高電界は生命科学分野における新技術として注目されてきているが、その作用機序には不明な点が多く残っている。特に、カルシウムの細胞内流入がナノ秒パルス高電界の生体作用の主要因なのか、それとも電気的な要因がカルシウム流入とは独立に細胞内部に作用しているのかは不明瞭であった。この点を明確にすることが重要であるが、これに想定より長い時間を要した。本研究ではナノ秒パルス高電界による白血球活性化の電気的・化学的要因の解析に加えて、従来より大きな容量のサンプルをナノ秒パルス高電界で処理する手法についても研究を行うが、これについては次年度に継続して実施する。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ秒パルス高電界をヒト培養細胞に作用させる際には、エレクトロポレーションで使用される市販キュベットが広く用いられている。この市販キュベットは電極間隔に応じて一定量のサンプルをナノ秒パルス高電界処理することが可能であるが、これより大きな容量のサンプルに対してナノ秒パルス高電界処理を行う方法について検討する。
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