研究課題/領域番号 |
21K18739
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
山下 聡 北見工業大学, 工学部, 教授 (00174673)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | メタンハイドレート / 湧出ガス / 海洋探査 / 海洋資源 / 海洋調査 |
研究開始時の研究の概要 |
海底表層にメタンハイドレートが存在している場合,海底深部から供給されるメタンガスの内,ハイドレート化できなかった過剰なガスが海底表層から気泡となって湧出し,音響測深機などによって観測される。この湧出ガスは,メタンハイドレートが温度・圧力条件により存在できない浅水域でも観察される。本研究では,これら湧出ガスを回収膜(網)によって安価で効率的に採取する方法を確立し,資源化につなげることを目的としている。そのために,湧出ガス地点の探査と継続性の確認,湧出ガス量の評価,湧出ガス回収装置の試作と室内模型実験,海洋での実証実験等を行う。
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研究実績の概要 |
表層型メタンハイドレートが存在している場所では,海底から湧出するガス(メタンガス)が観測される場合が多い。メタンは二酸化炭素の20倍もの温室効果のあるガスでもあり,湧出ガスの分布や湧出量を把握することは,地球規模の環境変動の解明にもつながる。また,湧出規模によっては資源としての可能性も持っている。そこで,北海道周辺海域で行ったこれまでの調査結果から,湧出ガスの分布状況の把握と網走沖におけるガス湧出量の概算を行った。さらに,湧出ガスの採取方法の検討を行った。 湧出ガスの分布状況については,北海道周辺海域での調査範囲内におけるガス湧出地点数と調査面積から,各海域でのガス湧出地点密度を求めた。その結果,1平方kmあたりの湧出地点数は,稚内西方沖(0.064),枝幸沖(0.060),網走沖(0.125),十勝沖(0.057),日高沖(0.004)となり,網走沖のガス湧出密度が最も高いことがわかった。また,網走沖の過去の調査範囲1600km2での湧出ガス量は,1年間で数十トン程度と見積もられた。 採取方法の検討では,湧出ガスを採取する方法として回収膜(網)を用いることを検討した。網構造を用いることの利点として,安価に回収装置が製作できる,網構造のため潮流による抵抗が少なく海底への設置が容易となる,過剰なガスは網を透過し外部へ漏出させることができる,ことがあげられる。このような,回収装置を考案するために,ガス流量,網角度,網目寸法を変化させた条件で,湧出ガスの透過率を室内実験によって調べた。その結果,流量が大きくなるほど,網角度が低いほど,通過率は高くなったことから,網構造を用いることによって過剰なガスを外部に漏出させることが可能であることなどが確認された。また,直径3m,高さ3m程度の大型タンクに,試作した回収装置の一部を設置し,ガスの採取が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内での主たる研究実施計画は,1)過去に取得した海洋観測データの解析に基づく湧出ガス量評価,2)海洋調査による湧出ガス探査と湧出継続性の確認,3)湧出ガスの採取方法の検討と室内実験,4)室内実験に基づいた海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験である。 1)のデータ解析に関しては,過去に調査した北海道周辺海域でのガス湧出地点密度を求め,オホーツク海網走沖が最も高いことがわかった。また,網走沖でのガス湧出量の概算見積もりも行った。今後,調査範囲を広げることによって広域的な湧出ガス量評価に繋げることが可能となった。2)の海洋調査に関しては,太平洋日高沖の海域において北海道大学練習船「おしょろ丸」による湧出ガス調査,海底地形調査,海底堆積物の採取と分析を前年度は行ったが,今年度は乗船予定者に体調不良者が多く発生したため調査を中止した。3)の湧出ガス採取方法の検討に関しては,回収装置を考案するために,ガス流量,網角度,網目寸法を変化させた条件で,湧出ガスの透過率や水流による抵抗値の測定を室内実験によって調べた。その結果,流量や網角度の違いによるガス通過率を把握することができ,網構造の回収装置によって過剰なガスを外部に漏出させることが可能であることがわかった。また,使用した範囲の網では,網目寸法によらず水流による抵抗値が,網構造でないものよりも3分の1程度に低下することが確認でき,網構造の有効性が確認された。4)の海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験については,水を溜めた直径3m,高さ3m程度の大型タンクに,試作した回収装置の一部を設置し,底部からガス気泡を流出することによって,ガスの採取が可能であるかを確認した。 以上のことを総合的に判断して,「本研究課題はおおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画である1)過去に取得した海洋観測データの解析に基づく湧出ガス量評価については,解析範囲を太平洋十勝沖,日高沖など過去の調査範囲全域に拡げ,ガス湧出量の概算見積もりを行う。また,新たな海洋調査地点(オホーツク海網走沖,太平洋日高沖)でのガス湧出量の概算見積もりも行う。 2)海洋調査による湧出ガス探査と湧出継続性の確認については,オホーツク海網走沖および太平洋日高沖において海洋調査を実施予定である。調査には北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」や用船を利用し,これまでの調査範囲を含め観測範囲を拡げ,海底からの湧出ガスの観測と海底地形調査を行い,ガス湧出地点と海底地形との関係を明らかにする。また,海底堆積物の採取も行い各種分析を行う。 3)湧出ガスの採取方法の検討と室内実験については,回収装置の模型を製作し,網目寸法,網種の違いによるガス漏出性の確認や回収効率の確認などを行う。実験は,直径0.3m,高さ1m程度の水槽に小型模型を設置し実施する。小型模型の成果を元に,直径3m,高さ3m程度の大型水槽により大型の回収装置の一部を設置し,回収効率の確認や湧出ガスの上昇速度や気泡径の計測などを水中撮影動画解析などにより行う。 4)室内実験に基づいた海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験については,室内での模型試作実験より得られた成果に基づいて,回収装置の大型化を図り,実際の海洋での回収模擬実験を海洋調査の際に実施する予定である。
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