研究課題/領域番号 |
21K18784
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
青山 裕 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30333595)
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研究分担者 |
西村 太志 東北大学, 理学研究科, 教授 (40222187)
田中 良 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30804926)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 間歇泉 / 熱水流動 / 地下水 / 多項目同時観測 / 熱輸送効率 / 表面現象 / 噴気活動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は地盤のごく浅い部分における熱水流動様式の変化とそれに伴う表面現象の変化に着目して熱輸送効率と表面現象との関連を明らかにすることを目的とし,先行文献からは得られない知見を新たに得ようとする試みである.本研究の柱は以下の3つである.①北海道や東北の間歇泉や活火山の噴気地帯における観測調査で実際の現象や活動場の情報を収集する.②実験室における間歇泉や噴気地帯の再現実験で水・熱供給率などの条件を幅広く変えながら,水・熱供給率などの変化と熱水噴出様式の関係を探索する.③熱水流動シミュレータを用いた数値実験により,実際の活動場や実験室での熱水流動の再現を試み,現象を支配するパラメータを絞り込む.
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研究実績の概要 |
2年目である2022年度も,北海道南部のしかべ間歇泉で本研究課題の開始前から実施している多項目連続観測を継続して,噴出孔口元近傍における温度観測,空気振動,傾斜変動を行ったほか,遊離ガスの化学組成分析を実施した.また,鬼首間歇泉で取得した熱赤外カメラ及び空気振動観測のデータ解析,倶多楽火山を想定した熱水流動の応答に関する数値計算などを実施した. しかべ間歇泉では,昨年度までの孔内観測により,裸孔となっている深度20mより深い部分の壁面から気泡が上昇していることが確認されていた.しかし,この深度における温度-圧力条件では水は気泡(水蒸気)に相変化できないため,気泡の正体が謎となっていた.そこで,11月に火山ガス分析の専門家である東京工業大学の野上教授にご協力いただき,噴出開始前の溢流時に確認される気泡を採取し,含まれるガス成分の組成分析を行った.その結果,気泡に含まれるガス成分の9割以上が炭酸ガスであることが確認された.この結果は,しかべ間歇泉に供給される熱水が炭酸ガスに飽和していることを示している.噴出時には裸孔部でも激しく気泡が発生する様子が孔内ビデオ観測で確認されており,噴出の駆動力に炭酸ガスも大きく寄与している可能性が示唆される. 鬼首間歇泉については,間欠泉噴出時に観測した熱赤外映像および空気振動観測のデータ解析を進めた.時間差分をとった熱赤外映像から熱水の噴出速度を算出し,噴出開始直後の20秒ほどは噴出速度が高いが,その後はやや低下してほぼ一定の噴出速度を示すこと,熱水塊の噴出に周期的な変動が見られることが明らかになった.先行研究による地盤変動観測の結果と合わせ,鬼首間歇泉では噴出孔の深部に接続された2つの熱水溜まりがあり,最初の20秒は噴出口に近い部分の熱水溜まりが,後半部分ではその熱水溜まりに接続したもう1つの熱水溜まりが熱水噴出に寄与していると推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
しかべ間歇泉における観測データの蓄積は予定通りに進んでいる.しかべ間欠泉では,噴出孔の口元と口元上方40cmほどに熱電対や白金抵抗体の温度センサー,噴出孔から数mの範囲に空振計と傾斜計を設置し,長期の連続観測を続けている.観測のノウハウが蓄積してきたこともあり,2022年度は欠落なく長期間のデータを得ることができた.また昨年度までに,噴出孔内に圧力センサーや温度センサーを挿入し数時間程度の孔内圧力・温度の連続観測を実施したほか,噴出孔内の映像調査により噴出サイクル内での孔内での気泡発生の様子も観察できた.今年度の大きな成果の一つは,孔内裸孔部から上昇してくる気泡の主成分が炭酸ガスであることが確認され,間歇泉に供給される熱水が噴出孔底部の温度圧力条件下では炭酸ガスに飽和していることが明らかになったことである.また,先行研究によって間歇泉の噴出に関与する圧力変動源の理解が進んでいる鬼首間歇泉では,噴出期における噴出強度の時間変化が,2つ存在すると考えられる圧力変動源からの段階的な熱水噴出に対応すると推測された.しかべ間歇泉,鬼首間歇泉のそれぞれでの観測研究の成果は論文投稿に向けて作業を進めており,しかべ間歇泉の成果は査読後の修正作業中,鬼首間歇泉の成果は投稿に向けた最終の準備中である. 地下水流動シミュレーションについては,熱水湧出口や噴気・地熱地帯が広く分布する登別温泉地域(倶多楽火山)を具体的に想定した検討を行った.電磁気学的な地下構造探査の結果から推測される水理構造を仮定した上で,深部からの熱水供給率を変化させた時の応答や地表面に現れる熱異常域の変化などの確認を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き,しかべ間歇泉での連続観測を最優先で継続する.2022年度に欠落なく長期間の安定した温度測定データが得られたことで,噴出周期の長期的な時間変化を吟味することができた.その結果,間歇泉近傍の潮位変化および周辺の大気圧変化と高い相関を示す変動成分が含まれることが明らかになった.今後はさらに固体潮汐に関する検証も加え,噴出周期の長期的・短期的変化の要因の検討をすすめる.鹿部間歇泉の噴出は,単純な水-水蒸気の系による質量・熱輸送現象ではなく,熱水に含まれる炭酸ガスの寄与も考慮しなければならないことも分かってきた.水蒸気以外のガス成分の寄与は本研究の想定範疇を超えるため検討を終えられないかもしれないが,間歇泉としての水・熱輸送を理解する上では重要である.後継となる研究課題で取り組むために,関連先行研究の調査を始めたい.鬼首間歇泉については,観測調査は2022年度までで終了とし,今年度内での論文成果公表を目指して考察ととりまとめ作業をすすめる. 昨年度は適切な調査日程を確保できず,実際の噴気地帯の調査に取り組むことができなかった.2023年度は有珠山の銀沼火口内にある噴気地帯を対象とし,噴気孔の近傍で土壌の粒度分布や空隙率,鉛直温度分布を調べ,地表面への水蒸気や熱の輸送状態を観察・検討する.この噴気地帯では,過去の学生実習等での経験で,地下1mには沸騰する熱水が存在するにも関わらず,地表には明瞭な噴気孔が存在しない領域があることが確認されており,本課題の調査地域として適当であると考えられる.観察した土壌の空隙率や温度分布を元に,同様のスケールで熱水流動シミュレータを用いた数値実験を行い,地表近傍での水・熱輸送の再現可能性を検討する.土壌の粒度分布や空隙率がわかれば,それを模擬した径のガラスビーズ等を準備し,室内での熱水流動実験を実施する.
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