研究課題/領域番号 |
21K18787
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
岡崎 慎司 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50293171)
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研究分担者 |
笠井 尚哉 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (20361868)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 水素検知スイッチ / 分散型ガス漏洩検知システム / 自律アラート / 白金担持酸化タングステン |
研究開始時の研究の概要 |
水素漏洩検知技術のイノベーションを目指し、単一のセンサデバイスから高精度・高分解 能のアナログ信号を得て危険性ガスの漏洩をモニタリングする現行システムの在方をブレ ークスルーする次世代漏洩検知システムを提案する。具体的には、数多くの超低コストON-OFFガスセンサを用いた分散型センサシステムを実現し、センサが自律的に発生したアラート信号を電波あるいは音波伝送手段で信号処理システムに無線化集約するシステムを構築する。さらに、センサのON出力の発生頻度と空間的分布及びそれらの時間的挙動変化からAI技術を用いて漏洩位置と漏洩量を推定可能とするシステムを構築する。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、2022年度は常温にて水素と反応する超低コストON-OFFガスセンサの開発を進めた。センシング材料としては常温にて水素と反応し,数桁オーダーで抵抗減少を見せる白金担持した酸化タングステン膜を利用し,これをくし形電極上に製膜したデバイスの性能を評価し,その性能向上や反応メカニズムの検討を行った。まず、膜厚が水素応答に与える影響について調べた結果、二重に重ね塗りを行ったデバイスは単膜のものよりも二桁ほどの大きな抵抗減少が確認でき、効果的なスイッチング作用を得るためには厚膜にすることが望ましいことが分かった。次に、薄膜中に存在する白金の存在状態が及ぼす影響を調べるため、作製した膜をホルムアルデヒド蒸気中でUV還元処理を施した。その結果、金属原子状の白金の存在比の増加による触媒特性の活性化により、水素曝露時の抵抗が4桁以上減少するなど薄膜の性能向上が可能であることが分かった。さらに、電極構造の最適化による水素応答の改善を試みた結果、くし型電極間の距離を0.5 mmから5μmに変更すると空気雰囲気下での抵抗が2桁ほどのオーダーで低下し、ベースラインの抵抗レベルが制御可能であることを示した。また、くし型電極の材料として金,白金,ITOの3種類を使用し、水素応答特性を比較した。その結果、くし型部の材料として白金を用いた場合の応答が他に比べて非常に高速であり、約20秒で抵抗の下限定常値に達した。これは,電極自体の触媒作用が非常に大きく、これが応答特性に大きな影響を及ぼしたものと考えられる。水素の爆発下限界である4 vol%付近の低水素濃度領域で十分な感度を有するか検討を行った。試料ガスに曝露した場合の定常抵抗値と水素濃度の関係を調べたところ、水素濃度とデバイス抵抗値には良好な直線関係にあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も引き続き自律アラート発生可能な簡易ガスセンサデバイスの構築を目指し、石英基板に櫛型電極を形成し、その部分に申請者が開発した白金担持酸化タングステン膜を固定化したデバイスの作製を進めた。特に、白金担持酸化タングステン膜に関しては白金の還元処理などを行うことで水素曝露時の抵抗変化、すなわちスイッチング作用が大きくなることが明らかとなるなど順調に性能改善を達成した。さらにくし形電極を細線化してくし歯の数を多くすることでRFIDデバイスなどの駆動に最適な抵抗制御が可能であることも示すことができ、おおむね順調な進捗状況と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
既存のビーコン(橋梁の加速度などを多点測定することなどを目的としたアクティブタグの加速度センサビーコン)と組み合わせることで水素スイッチング機能を持った一体型のセンサデバイスを容易に構築できることが明らかになったので、最終年度は、この形式のデバイスを複数作製し、配管等からの水素リークを模擬した試験装置を構築し、作製したデバイスの空間に漏れ出した水素に対する検出・アラート発出特性を詳細に検討する。また、2022年度に引き続き学会発表を積極的に進めるとともに論文投稿を進める。
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