研究課題/領域番号 |
21K18807
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川西 咲子 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (80726985)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 炭化ケイ素 / その場観察 / エレクトロマイグレーション / 溶液成長 / 高温界面 / シリコンカーバイド |
研究開始時の研究の概要 |
世界最高品質のSiC単結晶は2000℃での溶液成長法で育成されたものであるが、高度な制御技術なしでは、成長界面ではステップバンチングを生じ、界面の荒れを誘発する。そこで本研究では『高温界面エレクトロマイグレーション(EMと称す)』を追求し、バンチングへの作用を明らかにする。EMは通電により電子が金属と運動量を交換し金属を動かす現象であり、溶液成長では溶質のバルク拡散の速度を向上させる。一方、溶液成長時のバンチングの解消に繋がりうる界面拡散への影響は未解明である。そこで、申請者が開発したその場観察法を発展させ、高温界面におけるステップのナノ構造を捉えることで、界面EM効果の解明に挑む。
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研究実績の概要 |
本研究では、溶液成長法による高品質なSiCのバルク単結晶の育成に向け、高温界面エレクトロマイグレーションによるステップバンチングの解消の可能性を調査する。 2022年度は、高温固液界面のその場観察にあたり、溶融合金表面に容易に形成する酸化膜の影響を軽減するため、加熱炉に改良を加えた。これにより、種結晶の上下動ができるため、任意のタイミングで界面を形成することができるようになった。また、電流印加用の電極をはじめ、エレクトロマイグレーションの評価に必要な装置への改良を進めている。 また、エレクトロマイグレーションの効果の検証に向け、SiC基板を溶融Si系合金と接触させ、SiCが溶融合金中に溶解し平衡状態に近づく過程のその場観察を行った。n型ドーパントである窒素濃度の影響を調査した結果、窒素濃度が低い場合には貫通らせん転位を起点とする局所溶解が優先的に進行し、溶解初期段階で凹凸の激しい界面を形成することが確認された。窒素濃度が高いほど沿面方向への溶解が優先的に生じ、転位を起点とする局所溶解は生じにくくなることもわかった。本結果は、KOHエッチングによる転位評価におけるSiC結晶中窒素濃度の影響と類似しており、その理由についての考察も行った。また、2021年度には面極性の影響も明らかにしたことから、これらの評価をもって、ステップ形状の形成に及ぼす諸因子の寄与を明らかにした。これにより、エレクトロマイグレーションの評価に向けた実験条件を概ね決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ステップ形成に及ぼす諸因子の調査を進めているものの、加熱装置の部品交換や使用不可期間の発生により、エレクトロマイグレーションの検証までは至っていない。そのため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
エレクトロマイグレーションの評価に必要な装置への改良が完了し次第、その場観察による実験を行い、評価を進める。まず始めに、電流印加無しの条件にてSiCの溶液成長過程でのその場観察を行い、ステップへの溶質の取込量を定量的に評価する。次いで、電流印加有りの条件にて同様にその場観察を行い、その効果を明らかにする。これらを通じて界面エレクトロマイグレーションがステップの形状や溶質の取込量に与える影響を明らかにし、溶液成長時のバンチングの解消法への適用の可能性について提言する。
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