研究課題/領域番号 |
21K18811
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
田代 優 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90272111)
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研究分担者 |
永野 隆敏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 講師 (70343621)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | Cu-Al異種金属間接合 / 摩擦撹拌接 / 粒子法 / 金属間化合物相 / 合金相 / 回復・再結晶 / 異種金属間接合 / Cu-Al / 接合強度 |
研究開始時の研究の概要 |
空隙や欠陥等の材料不連続部を含めた接合界面における温度と圧力を予測することが可能な粒子法をこのFSWのシミュレーションに用いれば接合条件、接合部組織および接合強度の相互の関係を支配する熱や熱に支配される物性値を特定できる可能性があることに着目した。本研究では、電池電極として高信頼・高強度の接合が期待されているCu-Al異種金属材料のFSWによる接合部組織の定量的な組織観察結果と粒子法による接合部組織の再現シミュレーション結果の比較・評価を行い、接合部の温度分布や塑性流動を支配する接合パラメータを明らかにすることで「Cu-Al異材金属材料の基礎的摩擦攪拌接合メカニズムの解明」を行う。
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研究実績の概要 |
一般に流体に適用されてきた粒子法を拡張して高粘性流体という概念を溶融する前の金属状態にある摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding以下FSWと略す)時の 接合部に適用することを着想した。この概念を接合部付近の空隙や欠陥等の材料不連続部を含めた接合界面に適用することで、従来の実験的手法や有限要素法等では測定・算出が難しかった接合界面における温度や圧力を予測することが可能となると考えた。この手法では、接合条件、接合部組織および接合強度の相互の関係を支配する熱や熱に支配される物性値を特定できる可能性があることにも着目した。 本研究では、電池電極として高信頼・高強度の接合が望まれるCu-Al異種金属材料をFSWによって接合した場合の組織について、定量的な組織観察結果と粒子法による接合部組織の再現シミュレーション結果を比較・評価を行うことで、接合部の温度分布や塑性流動を支配する接合パラメータを明らかにすることを目的としている。 2022年度はついては、2021年度に実施した接合部の定量的な組織観察に必要な画像データから接合界面長さ、結晶粒径およびその分布について測定点を増やしてより詳細な定量評価を行った。 2023年度は、④接合部の詳細な組織観察を行った部分の硬さ試験によって評価を行い、組織との関係を調べた。粒子法についての検討項目では、計算機によるシミュレーション環境の拡充図り、金属の軟化温度付近における粘度を硬さ試験のシミュレーションから求め、これを粒子法によるAl-Cu接合のシミュレーションに応用した。その結果、AlとCuの撹拌する様子(粒子分布)と、接合時の温度(温度分布)を可視化に成功した。接合部の組織観察では、FSWによって生成された金属間化合物や合金相の組成をSEM/EDSを用いて測定を行い生成相の同定を行い、接合メカニズムの解明を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
厚さ2㎜のCuおよびAl冷間圧延材に接合条件を変えてCu-Al突合せFSWを実施して6種類の接合試料を作製した。これらの試料の接合部断面について、結晶粒径や その分布等を詳細に定量的な観察・分析を実施した。(担当:田代優) その結果、接合部の組織における主要な接合界面長さ、接合界面の状態が明らかとなった。基本的に結晶粒径の大きさは、Al、Cu共にプローブの直下及び近傍では、接合時のツール回転数(入熱量)に比例して大きくなる傾向があることが分かった。また、プローブ近傍のAl組織では、① FSWに用いるツール(プローブ)による摩擦熱と機械的撹拌の影響を大きく受け軟化した組織、② ①の組織から熱 と撹拌によって軟化した組織による圧縮を受けた組織及び、③ ①及び②の組織から伝搬した熱のみが素材の組織に影響した組織から構成されていることが分かった。 さらに、これらの組織観察を実施した試料表面にビッカース試験を実施した。(担当:田代優)その結果、Al及びCu共に接合時のツール回転数が低い場合(800rpm)、接合部から母材側へ行くに従い母材の硬さに近づくこと、高い場合(1000rpm)では、十分な摩擦熱の影響によって結晶粒径が粗大化・軟化していることが分かった。 粒子法によるFSW高粘性金属モデルの構築(担当:永野隆敏)金属の軟化点付近の粘度を考慮した粒子法モデルの骨格を作成し、高粘性流体を表現する高速・大容量データ処理が可能なシステムを構築した。一方、③接合部組織と高粘性流体パラメータの相関を検証(担当:永野隆敏・田代 優)及び①にて取得した接合界面長さ、接合界面の状態、結晶粒径分布等の接合部断面観察がコロナ禍で遅れたため、粒子法シミュレーション結果との比較・ 評価からシミュレーションの精度の向上と測定が困難な物性値等の解明は、2024年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス感染拡大の影響を受け、本学でも研究室の研究時間及び入室人数等の制限が長期にわたって実施されたため、2022年度における本研究の進捗の低下を招いた。 そのため、以下の計画④~⑥は、2023年度実施に変更とした。各項目の実施計画は以下のとおりである。 ④接合部の詳細な組織観察を行った部分の接合強度の引張試験評価を行い、接合組織観察で得たデータと接合強度のデータの相関性を 比較・評価を行う。(担当:田代優)) ⑤高粘性流体モデルに対して用いる物性値を断面観察結果から得られた接合界面形状や金属組織が再現可能となるような条件を選択しがら絞り込む。(担当:永野隆敏・田代優) ⑥具体的には、動粘性係数、熱伝導率等既に分かっている融点以上の液体金属の値をモデル計算から高粘性側に外挿しながら値を絞り込み、粒子法によって再現可能な、FSW接合部近傍における不連続な攪拌粒の生成過程の評価を行う。(担当:永野隆敏・田代優) しかし、2023年度もコロナ禍の影響によって④接合部の詳細な組織観察を行った部分の引張強度測定が実施できていない点、接合組織観察データの取得数がシミュレーションデータと比較検討するためデータ数より少ないため、接合強度のデータの相関性を 比較・評価が未達成である点(担当:田代優))が原因となり、上記計画⑤および⑥との比較検討が遅れている。 このため、2024年度は、上記計画④の実施による観察データ数を増やすことと接合強度の引張試験評価を中心に研究を進める。これに加え、接合メカニズムの解明に不可欠な接合組織中に観察された金属間化合物や合金相の同定を行い、⑤および⑥のシミュレーションの結果との比較検討を行い、接合部の温度分布や塑性流動を支配する接合パラメータの解明を目指す。
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