研究課題/領域番号 |
21K18824
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 全固体電池 / 固体電解質 / リチウムイオン / ガラスファイバ / 極薄シート / Li7P2S8I / Li7P3S11 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、我々が最近見出した「液相から調製したガラスファイバ/硫化物系固体電解質複合体が絶縁性のガラスファイバを含むにもかかわらず、非常に高いリチウムイオン伝導性を示という従来常識では予測できない興味深い萌芽的知見」に基づいて、ガラスファイバ/硫化物系固体電解質界面構造解析と高伝導性・極薄電解質膜の創製を行い、全固体リチウム電池に応用することで、次世代の大容量蓄電デバイスの研究開発にブレークスルーをもたらそうとするものである。
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研究実績の概要 |
液相加振(Liquid-phase Shaking: LS)法は、有機溶媒中で出発原料をジルコニアボールと振とう処理することで硫化物系固体電解質を調製する方法である。このLS法による固体電解質合成の際に、電解質膜の補強材としてガラスファイバを添加してLi7P2S8I(LPSI)/ガラスファイバ複合体シートを調製したところ、絶縁物であるガラスファイバを添加しているにも関わらず得られた複合体がLPSI固体電解質と同等の非常に高い伝導性を示す現象を見出した。 LPSI電解質にSiO2ファイバを添加した膜厚40~50μmのシートを作製し、熱処理温度の最適化を行った。その結果、150℃で熱処理したシートにおいて最も高い室温導電率が得られ、0.23 mS/cmとなった。脱溶媒とLiI結晶化低減が、高い導電率を達成するために重要因子であることがわかった。 さらに、LPSIよりも導電率の高いLi7P3S11/ SiO2ファイバ電解質シートの作製に取組んだ。XRDの結果から、SiO2ファイバ添加による不純物相の生成は認められず、室温で0.8mS/cmの非常に高い導電率が達成された。さらに、Li7P3S11/ SiO2ファイバを添加することで、Li金属負極に対する安定性が向上する新しい知見を得た。 一方、全固体電池の構築では、正極活物質にNi1/3Mn1/3Co1/3O2(NMC111)、セパレーターに熱処理温度150 oCで作製したLPSI/SiO2ファイバ電解質シートを用いて、全固体電池を試作し、電池動作を初めて確認した。充放電サイクルによる容量低下の原因調査と、さらにその特性向上に取組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、引き続き以下の実施項目について取り組んだ。その結果、SiO2ファイバ/固体電解質界面構造の解析が進んだ。また、全固体電池を構築できる見通しを得た。 【実施項目:反応機構・ガラスファイバ/固体電解質界面構造解明】 熱処理温度を変えて作製したLPSI/SiO2ファイバ電解質シートの XRDパターンを詳細に調べた。熱処理温度130℃では、ほぼ非晶質であった。150℃ 以上で Li4PS4I に起因するピーク、170 ℃以上で出発材料である LiI に起因する回折ピークとその増大が確認された。 LPSIよりも導電率の高いLi7P3S11/ SiO2ファイバ電解質シートの作製に取組んだ。XRDの結果から、SiO2ファイバ添加による不純物相の生成は認められず、室温で0.8mS/cmの非常に高い導電率が達成された。SiO2ファイバの添加量と添加のタイミングによって、導電率、シート形成性などが変化することがわかった。さらに、SiO2 ファイバ添加によって、デンドライト成長を抑制し、Li金属安定性が向上する知見を得た。 【実施項目:高伝導性・極薄電解質膜の作製と全固体電池特性評価】 正極活物質にNi1/3Mn1/3Co1/3O2(NMC111)、セパレーターに熱処理温度150 oCで作製したLPSI/SiO2ファイバ電解質シートを用いて、全固体電池を構築し、充放電試験を電流密度(0.05 C、作動温度30℃)により評価した。初期充電容量は150 mAh g-1 、初期放電容量は100 mAh g-1となり、電池動作を初めて確認した。プレス圧を増大することによって、初期充放電容量が増大し、繰り返し充放電による容量低下を低減できることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
【実施項目:反応機構・ガラスファイバ/固体電解質界面構造解明】では、Li7P3S11にSiO2 ファイバ添加することで、Liデンドライト成長を抑制し、Li金属負極安定性が向上した理由を詳しく調査する。また、硫黄Sを過剰に添加した溶液プロセス(ESS)法に取組み、特にLi7P3S11電解質のSiO2ファイバとの複合化を進め、電解質シートの導電率向上とシート厚みの低減に取組む。また、Li7P3S11電解質/種々の酸化物の複合界面の高度解析をラマン分光法、NMR法、さらに非暴露XRD、TEM観察、インピーダンス解析等により実施する。さらに、アルジロダイト組成の電解質についても検討を行う。 【実施項目:高伝導性・極薄電解質膜の作製と全固体電池特性評価】では、LPSI、Li7P3S11を中心に種々の固体電解質組成と熱処理・機械プレス条件の最適化を行い高伝導性・極薄電解質膜の作製と全固体電池の試作を行う。全固体電池試作については、負極活物質にグラファイトもしくはシリコン、 正極材料にはいくつかのNiMnCo系酸化物等を用いて継続して評価を行う。充放電容量の向上と、サイクル劣化の低減に取組む。
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