研究課題
挑戦的研究(萌芽)
酵素活性の向上は、産業や医療への応用において重要である。しかし、従来は進化分子工学的手法による大量の実験が必要であった。そこで、この状況を打破するために、本研究では酵素活性を合理的に向上させるための普遍的手法を開発する。これは学術上の難問であるが、我々は最近、課題解決のブレイクスルーとなる方法を考案して予備的な研究を行い、モデル酵素の活性を大きく向上させることに成功した。この技術を確立させるために、本研究では、この手法の妥当性の検証と、様々な酵素への適用による普遍性の検証を行う。さらに、機械学習等により理論計算法を最適化する。以上により、多くの酵素に適用可能な普遍的技術の確立を目指す。
触媒反応を行うタンパク質(酵素)は、生命現象の維持に必要なだけでなく、有用物質の工業生産にも必要であり、産業や医療などの幅広い分野に応用されている。それゆえ、酵素活性を向上させる方法の開発は、産業や医療などにおいて極めて重要である。そこで本研究では酵素活性を合理的かつ効率的に向上させるための普遍的な手法の開発を目指している。2023年度は次の成果を得た。(1) 我々が提唱する方法によって高活性化したジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の変異体をさらに詳細に特徴づける実験を行った。その結果、ミカエリス定数(Km)をほぼ変えずに代謝回転数(kcat)のみを向上できたことが示された。また、我々が高速化を狙った反応プロセスが実際に高速化していることが示唆された。これにより、本手法の妥当性を検証できた。(2) Rosettaソフトウェアを用いたタンパク質設計を数十通りの計算方法で試行し、実験結果を最も再現できる計算方法を見出した。(3) 本設計法の普遍性を検証するために、本手法を他の酵素に適用し、高活性化しうる変異体を設計した。(4) 酵素が機能を発揮するためには、特定の立体構造にフォールディングする必要がある。しかし、産業などで利用されているタンパク質の中には、フォールディングが困難なために製造が難しいものがある。そこで、タンパク質のフォールディング反応のメカニズムを理論的に予測する手法を開発した。また、生体内でのフォールディング反応の予測を試みた。さらに、タンパク質のフォールディング反応を理論的に改変する手法の開発を行った。(5) タンパク質と標的分子との結合を強化させる変異体を、物理学ベースの設計法や深層学習ベースの設計法などを用いて合理的に設計することを試みた。
すべて 2024 2023 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
J Mol Biol.
巻: 436 号: 5 ページ: 168451-168451
10.1016/j.jmb.2024.168451
Current Opinion in Structural Biology
巻: 84 ページ: 102734-102734
10.1016/j.sbi.2023.102734
Food Chemistry: X
巻: 21 ページ: 101165-101165
10.1016/j.fochx.2024.101165
Nature Communications
巻: 14 号: 1 ページ: 6338-6338
10.1038/s41467-023-41664-1
FEBS J.
巻: 290 号: 20 ページ: 4999-5015
10.1111/febs.16911
Scientific Reports
巻: 13 号: 1 ページ: 6330-6330
10.1038/s41598-023-32848-2
総合診療
巻: 33 ページ: 87-89
Molecules
巻: 27 号: 14 ページ: 4460-4460
10.3390/molecules27144460
Microbial Cell Factories
巻: 21 号: 1 ページ: 256-256
10.1186/s12934-022-01981-4
Frontiers in Molecular Biosciences
巻: 9 ページ: 862910-862910
10.3389/fmolb.2022.862910
巻: 12 号: 1 ページ: 816-816
10.1038/s41598-021-04497-w
生物工学
巻: 99 ページ: 469-472
130008091572
https://folding.c.u-tokyo.ac.jp/