研究課題/領域番号 |
21K18852
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
恩田 歩武 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 講師 (80335918)
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研究分担者 |
平岡 雅規 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (30380306)
今村 和也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (30750624)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 多糖 / 固体触媒 / 海藻 / 酸触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の有機物資源の1つと期待される海藻は,食料や淡水資源と競合しない,成長速度が速くて太陽光利用効率が高い等,資源作物として利点が多い。海藻の構成成分の約半分は「細胞間粘質多糖」である。本研究では,独自技術で構成成分の再現性が極めて高い海藻を製造し,独自の多糖変換技術や触媒調製技術を用いて,高付加価値な低分子量多糖および糖カルボン酸を生産する。特に,光触媒作用と熱触媒作用を組み合わせることにより,温和な温度及び塩共存下で機能する実現性の高い新規な触媒変換プロセスを提示する。
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研究実績の概要 |
次世代の有機物資源の1つと期待される海藻は,食料や淡水資源と競合しない,成長速度が速くて太陽光利用効率が高い等,資源作物として利点が多い。海藻の構成成分(水を除く)の約半分は「細胞間粘質多糖」であり,酸性官能基および金属カチオンを含有するヘテロ多糖である。類似の細胞壁多糖は,陸上植物ではヘミセルロースとも呼ばれ,セルロースと同等の存在量があり,構成単糖由来の高付加価値化合物(低分子量硫酸化多糖,オリゴ糖,希少糖等)の原料として期待される。しかし,それら多糖は種類も多く酵素法の適用が困難とされる。そこで本研究では,光触媒と熱触媒を組み合わせた固体触媒法により,従来法の課題であるバイオマス中に存在する金属イオンによる失活を受けにくく,温和な反応温度で加水分解を促進する革新的な固体酸触媒の開発をめざして研究をすすめた。 海藻として,最も高い成長速度を有するミナミアオノリに着目し,タンク養殖法でクローン的に約2kg(乾燥重量)を培養生産した。そこから、水熱法で、主構成成分であるウルバンという硫酸化多糖を抽出した。物性評価し,分子量は約800,000であった。それを,触媒水熱法により加水分解した。反応温度、時間、触媒量により、分子量および硫酸化度を連続的に変化させた。得られた低分子量ウルバンの構造を種々の分析法により解析した。NMRについては現在実験中である。 また,光触媒変換への適用を検討し,ニトロベンゼンと種々の単糖の混合溶液に酸化チタンを入れて光照射したところ,水素なしでアニリンが高収率で生成することを確認し,その触媒プロセスを単糖ではなく海藻多糖やヘミセルロースなどのバイオマス多糖に変えたプロセスを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンク養殖法でクローン的に約2kg(乾燥重量)を培養生産した。そこから、主成分である多糖ウルバンを水熱法で抽出した。触媒水熱法により加水分解した。反応温度、時間、触媒量により、分子量および硫酸化度を連続的に変化させた。また,光触媒変換への適用を検討し,ニトロベンゼンと種々の単糖の混合溶液に酸化チタンを入れて光照射したところ,水素なしでアニリンが高収率で生成することを確認した。このように、海藻の生産、海藻多糖の抽出、水熱法による海藻多糖の触媒変換、光触媒法による糖を用いた有機物変換のいずれにおいても、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に引き続き,海藻多糖の生産・分析を行う。海藻多糖の多くは市販されていないため、化学試薬と同程度の研究用グレードの海藻多糖を得る。その方法は、DNA既知の株を培養し10kg程度の海藻を生産し、その主構成性成分である細胞間粘質多糖を抽出する。また,得られた多糖の化学構造分析する。海藻として,今年度は,複数種類のアオサ属に展開する。いずれも,キログラムスケールで海藻を生産し,水熱抽出法で多糖を抽出する。得られた多糖は,alditor acetate法(GC分析), NMR, TOF-MS分析などにより多角的に化学構造分析する。細胞間粘質多糖(海藻多糖およびヘミセルロース)の選択的加水分解に有効に働く光応答性の固体触媒プロセスの開発を行う。様々な炭素材料および金属酸化物材料を用いて,多糖・オリゴ糖の化学構造と反応性の関係を解明する。炭素材料は,酸化-還元処理により,親-疎水性を制御する。光照射に応答して触媒作用を示すTiO2について、光触媒作用と熱触媒作用を解明する。具体的には,300 nm以上の波長の光照射下において、TiO2などの光触媒作用と酸触媒作用もしくは酸化触媒作用を示す物質を用いた多糖低分子化について、温度及び照射波長に対する反応挙動の解明および反応機構の推定を行う。また、反応に対する,水溶媒中の金属イオンの阻害効果,高分散担持するTiO2の粒径の影響,触媒の前処理温度の影響についても検討する。今年度の研究体制は,1年目と同じく3名で,恩田歩武がバイオマス多糖の触媒変換・抽出,固体触媒調製を担当し,今村和也が光触媒による有機化学反応を担当し,平岡雅規が海藻育成を担当する。
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