研究課題/領域番号 |
21K18857
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
岡島 元 中央大学, 理工学部, 准教授 (20582654)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | ラマン分光 / マイクロ反応 / ラマン温度 / in situ分析 / イメージング / in situ / マイクロ化学反応 / 顕微分光イメージング / 複合分析 |
研究開始時の研究の概要 |
微小空間の温度と分子構造とを同時かつ複合的に測る新規分光イメージングを構築する。分子分光は分子の種類、構造、分布を非接触に分析でき、測定の空間分解能はサブμmにまで及ぶ。一方で温度は反応の重要な熱的パラメーターであるが、分子分光と同じ分解能で同じ箇所を測定するには限界があった。本研究では、反応分子から生じるひとつのラマン散乱から温度と構造の情報を同時に抽出するという独自のアプローチに基づいた分析手法を構築し、精密化学合成で使われるマイクロリアクター内のin situ, operando追跡に応用する。このようにして、熱科学と物質科学を融合させた実験的プラットフォームを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では微小空間の温度と分子構造を同時かつ複合的に測る新規分光イメージングを構築する。当該年度は、水溶性溶媒の汎用的な温度決定法を検証し、微小流路内部の温度とスペクトルの同時測定に活用した。特に、水-エタノール系などの水溶液試料に関して、低振動数領域の分子間振動のラマンスペクトルのラインシェイプを調べるという同一の解析方法で、多種の溶液が統一的に温度測定可能であることを確認した。現段階では、この方法は水溶液試料へは系統誤差なく適用できる一方で、有機溶媒系試料への適用には系統誤差が生じることが判明した。このことの理由として溶液中の水素結合による影響の可能性が考えられる。しかしながら、溶媒に依存する系統誤差に対する一般的な補正法も同時に開発しており、今後の問題となる可能性は低い。さらに、このようにして構築した流路内部のin situ温度測定の活用として、温度勾配流路に対する走査型の熱分析を実現した。1,2-ジクロロエタン(DCE)やイミダゾリウム系イオン液体のいくつかに対して、回転異性化と温度の測定を同じ光信号から複合的に行い、液体試料の温度特性を迅速に調べる手法を構築した。これらの走査測定で得られた異性化エンタルピーは、従来の温度変化型測定で得られた値とも一致し、測定誤差も比較的小さい。さらに、多数の温度依存スペクトルを得ることができるという優位性をもつため、多変量解析や機械学習への親和性も高いと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載した通り概ね順調に進んでいる。昨年度は、低振動数領域の分子間相互作用の信号から「液体の構造」の変化を捉え、同時にその信号を温度測定にも用いられることまで示してきた一方で、構造と温度を連結しての測定・解析は行えておらず、本研究の主題に取り組めてはいなかった。それに対して本年度は、微小流路の温度勾配走査測定という形式で、同時複合解析の有効性を活かした研究に展開してきている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した温度勾配走査測定法を活用し、この手法を発展させ、本研究の主題とする複合分光イメージングの活用例を増やしていく予定である。とくに、多変量解析と組み合わせた液体構造変化の追跡と温度複合分析に展開する。並行して、分子レベルのホットスポットの解析と組み合わせることで、微小化学反応系での、液体構造変化と物質変換・局所発熱の複合分析を行う。
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