研究課題/領域番号 |
21K18859
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
柴 弘太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20638126)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ニオイ / 流体熱力学 / 質量分析 / 分子量 / モバイル |
研究開始時の研究の概要 |
ニオイは数十万種類あるともいわれている。加えて、個々のニオイは、ときに数千種類もの分子からなる混合気体である。このようなニオイの多様性・複雑性ゆえ、その分析は常に高度に専門的である。本研究では、申請者が開発した大気環境下で実施可能な分子量測定法をベースに、ニオイを定性・定量可能な革新的かつ簡易なアプローチの創出を目指す。このアプローチには、従来法と異なり装置の大幅な小型化が見込まれるため、コンシューマー用途まで見据えた社会実装の可能性がある。このように、モバイルデバイスを用いた呼気診断やニオイ通信など、次世代技術・産業を志向した研究を推進する。
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研究実績の概要 |
本研究では、物理的に分子を測る独自手法(流体熱力学質量分析;AMA)をもとに、ニオイ識別のための新コンセプト「超香紋」を提案する。AMAは従来の質量分析に必須の試料のイオン化を必要としないため測定系を大幅に小型化でき、モバイル用途が視野に入る。また、物質固有の分子量をリアルタイム測定可能という特長を有する。そこで、ニオイを吸着材へ捕集し、昇温・吸引により脱離させた分子をAMAによって逐次測定することで、ニオイの全成分に基づく「全分子量スペクトル=超香紋」を取得する。これはニオイの中身を反映するため、指紋認証のように、ニオイ間の比較を定量的な情報に基づいて超高精度に行うことができる。様々な吸着材を用いることで、いかなるニオイに対しても全分子量スペクトルを取得するための条件最適化・指針獲得を行う。以上のように、呼気診断など挑戦的かつ有意義なニオイ識別を、手軽に実施するための成果を創出する。 昨年度は上記目的に向けて様々な検討を行っている中で、予期せず気体測定のための新たな手法を創出した。この手法は色の変化に基づいて気体を識別することができるものであり、詳細な検討の結果、色の変化は気体の分子量および粘度に依存することを見出した。これら二つの量は相互に依存しないため、原理的に一種類の気体は一つの色を与えることになる。つまり、この色自体をその気体に固有の指紋のように扱うことができる。この技術と、これまで継続して検討を進めているガスクロマトグラフィーを利用した分離・濃縮機構を組み合わせることで、ニオイに含まれる構造異性体にも対応可能な超香紋を実現することが可能になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、分離・濃縮機構に関する諸検討を進めていく中で、「色の変化を利用した気体の識別手法」を創出した。本手法は予期せず得られたものであり、当初その詳細な原理が不明であったため別用途を検討していたが、色の変化が分子量および粘度に依存することを明らかにしたことで、結果として本研究で提案している超香紋というコンセプトの拡張につながる手法であることが分かってきた。当該手法は、既に特許申請、論文発表、プレスリリース、学会発表などの形で発表済みである。今後はこの手法を積極的に採用していくことにより、当初計画した目標以上のことを目指して研究を推進していく予定である。以上より、現在までの進捗状況は大変良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、これまで継続して検討を進めているガスクロマトグラフィーを利用した分離・濃縮機構と色の変化に基づく気体の識別手法を組み合わせることで、ニオイに含まれる構造異性体にも対応可能な超香紋の実現につなげる。当初の予定では分子量に基づいたスペクトルを取得することを考えていたが、この場合、構造異性体のように同一分子量の分子の扱いに困難が生じるおそれがある。一方、色変化に基づく新手法の場合、その色変化は分子量および粘度の両者に依存するため、上述の問題は生じない。そのため、より情報精度の高い超香紋を得ることができるはずである。この仮説を検証するべく、まずは数種類程度の気体種からなる混合ガスなどを用いて基礎検討を行い、その後、構造異性体を含めた検討へと展開していく予定である。
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