研究課題/領域番号 |
21K18881
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大江 知之 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (30624283)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | フラーレン / SARS-CoV-2 / COVID-19 |
研究開始時の研究の概要 |
パンデミックとなったCOVID-19は社会、政治、経済に大きな影響を及ぼしている。現在、様々な研究機関がワクチン開発の他、治療薬開発に取り組んでいるが、コロナウイルスは変異を起こしやすいため、将来的に薬剤耐性を示す可能性も高い。申請者らの計算化学的手法により、ある種のフラーレン(C60)誘導体はSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(Mpro)に結合し、その機能を阻害することが予想されている。本研究では、Mproを阻害するC60誘導体を見出し、新規COVID-19治療薬の創製を目指す。C60はユニークな骨格であるために、既存薬とは交叉耐性を起こしにくく画期的な薬剤になる可能性を秘めている。
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研究実績の概要 |
サッカーボール型炭素同素体フラーレン(C60)は、その球状の縮合芳香環構造に由来した物理化学的性質は非常にユニークであり、様々な分野で応用研究が行われている。創薬化学の観点からも興味深く、これを母核とした画期的な医薬品の創製を目指した研究も行われている。一方、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染により引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬を目指し、世界中で様々な研究が行われているが、最も期待されているターゲットとしてメインプロテアーゼがある。 申請者らは、前年度までに、様々なC60誘導体のSARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する阻害効果を、自身で構築した評価系を用いてスクリーニングした結果、ビスマロン酸型C60誘導体に非常に強い活性があり、アザフレロイド型誘導体には中程度の活性、新規にデザイン・合成したピロリジン型誘導体には弱い活性しかないことを明らかにした。本年度は、活性が比較的強い誘導体を用いて立体異性体間で差があるかを検討することとした。まずは不斉触媒を用いて立体選択的合成を行ったが、良好な鏡像体過剰率で目的物を得ることができなかったため、キラルカラムHPLCを用いて光学分割を行い、得られたcisおよびtransそれぞれの鏡像異性体に関して、鏡像体過剰率を算出した。また、分取したそれぞれに関して円偏光二色性(CD)分析を行い、指紋領域である430 nm付近に観察されたコットン効果の正負から、セクタールールを用いて絶対配置を決定した。分取した立体異性体のDMSO溶液に関して、ラセミ体を用いて濃度既知のDMSO溶液を別途調製して作成した検量線をもとに濃度を算出し、希釈を行い、SARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する阻害効果性を評価した。その結果、この誘導体に関しては立体異性体間に活性の差はほぼ見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、SARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する阻害アッセイ系の構築をした上で、当研究室ですでに合成されていたC60誘導体を用いてスクリーニング的に評価したところ、様々なフラーレン誘導体がメインプロテアーゼを阻害することが明らかになり、その中でもビスマロン酸型誘導体が強力な阻害能を有することを見出した。2年目は、それをもとに、新規誘導体の合成に着手し構造活性相関を進めたことに加え、これまでの誘導体とはタイプが異なるアザフレロイドのシリーズで活性が強いものを発見した。以上の成果は投稿論文にまとめられ、すでに受理されている。3年目となる本年度は、活性のあったフラーレン誘導体の立体選択的合成やキラル分割にも挑戦し、純度の高い光学異性体を得ることにを成功している。残念ながら、これらの異性体間にメインプロテアーゼに対する阻害活性の差は認められなかったが、差がないという結果も重要な知見と思われる。このように、3年目も1年目、2年目に得られた成果をもとに着実に研究を展開しており、研究は順調に進捗したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
一部のC60誘導体には抗炎症作用があることが明らかになっている。COVID-19は炎症を伴う疾患であることから、SARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する阻害活性のある誘導体に抗炎症効果や抗酸化活性があれば、多標的型COVID-19治療薬候補となり得るので、細胞系などを使って抗炎症効果の評価を進める。また、次なるステージとして、候補化合物について、水溶性、膜透過性(人工膜、経細胞輸送)、代謝安定性(肝ミクロソームや肝細胞)、細胞毒性(肝細胞)などを評価する。
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