研究課題/領域番号 |
21K18898
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉澤 俊介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (60583276)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 走査型トンネル顕微鏡 / 原子層 / 表面・界面 / 原子・分子操作 / 走査トンネル顕微鏡 / フラットバンド |
研究開始時の研究の概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)を使った物性制御の可能性を追求する。具体的には、原子層物質の表面に吸着させた原子・分子を、STM 探針を使って操作し、人工的な格子状に並べる。これにより原子層物質の電子状態に変調を加え、それにともなう物性の変化をトンネル分光測定から検知する。これを現実的な時間で行うために、原子・分子操作の自動化も進める。
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研究実績の概要 |
走査型トンネル顕微鏡(STM)は、物質表面の原子配列を観察するだけでなく、表面に吸着した原子や分子一つひとつを動かす用途に使うことができる。STM を使って原子や分子を規則正しく並べたいわば「人工格子」を作ると、その吸着物の配列に応じて表面電子状態を変化させることができる。しかし、原子・分子操作の研究のほとんどは貴金属単結晶基板上で行われており、表面に特殊な電子状態を作ったとしても、物性は金属基板のバルク特性で決まってしまう。そこで本研究では表面の電子状態だけが巨視的な物性を支配する原子層物質に着目する。原子層物質の表面に吸着した原子や分子の操作により表面電子状態を変調し、超伝導転移温度をはじめとした物性の制御を図る。この目的のためには多数の原子・分子を精度良く操作する必要があるので、STM 制御のプログラミングも進める。 本目的を達成する実験を最適な環境で行うため、2022年度は、原子層物質の成長条件の最適化およびSTM動作中の振動対策を行った。後者に関しては、まず液体ヘリウムを減圧して極低温を実現するための大型ポンプを屋外ポンプ小屋に移動し、建物壁で騒音および振動が減衰されるようにした。これにより、1.6 K での測定安定性が格段に向上した。また、地震による原子・分子操作中への影響を防ぐため、緊急地震速報を利用して大きな地震動を回避する仕組みを構築した。吸着物の同定を自動で行うために、教師無し機械学習によるクラスタリングの手法の適用を試みた。具体的には、前年度に取得した NbSe2 の高解像度STM像に対してブロブ検出により欠陥位置を特定し、欠陥近傍の画像を自動で分類することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子・分子操作を安定に実施するための整備を進めることができた。原子・分子操作の実験の実施直前にSTM装置に一時的な不具合が発生したため、当初予定していた原子・分子操作の実験は進まなかった。不具合はまもなく復旧する予定である。一方、機械学習の導入の準備が進んでおり、整備した装置によって当初想定していなかった副産物的な成果も得られている、総合すると概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は原子操作自動化の処理において、操作のエラー検知と修正、基板の結晶格子を参照した位置指定の仕組みを実装する。また、原子層物質を基板に用いた実験も行う。基板としてはインジウム原子層のほか、遷移金属ダイカルコゲナイドをはじめとする層状物質の単層膜も選択肢に含め、計算と合わせた物質探索を進める。
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