研究課題/領域番号 |
21K18901
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 智也 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (50735032)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 溶液セル / グラフェン / 透過型電子顕微鏡 / 窒化ケイ素 / 高圧 / 溶液セル透過型電子顕微鏡法 / 高温高圧環境 |
研究開始時の研究の概要 |
電子ビームを透過できる薄膜を観察窓として用いた溶液セルは、これまで非常に困難であった透過型電子顕微鏡での溶液試料の観察を可能にする。一方、本手法で観察している溶液セル内の温度圧力環境は良く分かっておらず、それを制御することも困難である。本研究では2層のグラフェン間に厚みを制御して溶液試料を挟み込むことで溶液セルを作製し、溶液中で成長する結晶の成長と溶解を観察する。ここから溶液セル内の温度圧力環境を測定し、溶液セル透過型電子顕微鏡法で高温高圧実験が可能であるかを検証する。本溶液セルが高温高圧セルとして用いることができれば高温高圧条件で溶液中の現象を原子・分子レベルで観察できる強力なツールとなる。
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研究実績の概要 |
本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて高温高圧環境における溶液試料の観察が可能かどうかを検証することを目的とする。 2021年度は厚みを制御しつつ、容易に溶液セルが作製できるよう、窒化ケイ素薄膜に未貫通穴を設置した井戸型形状を持つ薄膜を作製した。2022年度は、未貫通穴に溶液試料を充填し、グラフェンを被せることで封をした溶液セルの作製方法とその検討を行った。 作製過程におけるコンタミネーションを極力少なくするために、作製の工程数を少なくする工夫を行った。また、銅グラフェンの銅をエッチングする溶液(エッチング液)を水に置換する、といった工夫も行った。それにもかかわらず、作製した溶液セルを観察し、元素分析を行った結果、エッチング液の成分と思われる元素を検出した。これは従来考えられているよりもグラフェンにエッチング液が残留しやすいことが示唆される。また、従来考えられていたよりもこのような形状の溶液セルに液体を封入することが困難であることが分かりつつある。現在この要因を多角的に調査している。 一方、窒化ケイ素薄膜を用いた溶液セルを試料冷却TEMホルダーで使えるような試料ホルダーの先端部を用い、溶液セルを冷却できる実験系を構築した。この手法により溶液セルの冷却実験を行ったところ、溶液セルの内部の圧力が大気圧よりも高いことを示唆する結果が得られた。この要因と実際にどのくらい圧力が高くなっているかを測定する手法を現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンを用いた溶液セルの作製は難航しており、その要因を現在調査している。現在、その一端が明らかになりつつある。これが明らかになることで、グラフェンを用いた溶液セルの作製が困難である理由が分かり、このタイプの溶液セルの作製効率が飛躍的に向上する可能性がある。 一方、非晶質窒化ケイ素薄膜を用いた溶液セルでは、その内部が比較的高い圧力環境になることは想定されていない。しかし、実験的にそれを示唆する結果が得られたため、こちらのタイプの溶液セルに関しても、高圧環境の実現可能性について検討する余地が生まれた。このタイプの溶液セルはグラフェンを用いたものと比較して取り扱いしやすいため、より容易に高圧実験が行える可能性がある。 以上の研究成果を総合的に考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェンを用いた溶液セルの作製方法を引き続き検討する。また、新たに窒化ケイ素薄膜を用いて高圧環境の実現可能性が出てきたことから、こちらのタイプの溶液セル内部の圧力の推定や検討を行う。
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