研究課題/領域番号 |
21K18929
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菱川 明栄 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (50262100)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | トンネルイオン化 / 光電子円2色性 / キラル分子 / 強レーザー場 / 円2色性 / 光電子角度分布 / コインシデンス計測 |
研究開始時の研究の概要 |
超短パルス強レーザー場におけるキラル分子のレーザートンネル電子円2色性を観測する。実験室系におけるトンネル電子の3次元運動量分布や,解離生成イオンとの相関を計測することによって,左右円偏光に対する分子応答がどのように変化するかを明らかにする。これによって,強レーザー場円2色性計測による新しいキラリティ検出法の開拓に向けた,キラル分子のトンネルイオン化ダイナミクスの理解を進める。
|
研究実績の概要 |
超短パルス強レーザー場におけるキラル分子のレーザートンネル電子運動量分布の3次元運動量観測に向けて,引き続き電子ーイオンコインシデンス運動量計測系および高繰り返しレーザーシステムの整備を行った。同等のイオン化ポテンシャルをもつArおよびH2について,トンネル電子の運動量分布計測を行ったところ,観測されたトーラス状分布の主半径およびトーラス断面に現れる垂直運動量分布の幅にArとH2で明瞭な違いが見出された。高強度場近似(SFA)に基づく理論計算を用いてp軌道およびs軌道からイオン化した光電子の運動量分布を計算を行い,観測された光電子分布の違いは価電子軌道がもつ特徴,特に軌道角運動量に起因していることが明らかとなった。また,実験室系および分子座標系における光電子円2色性(PECD)の精密計測を実現するために,2段スキマーを用いた冷却分子ビーム源の設計・製作を進めた。
昨年度四フッ化炭素(CF4)において観測された強レーザー場における円偏光ヘリシティ依存性の詳細を明らかにすることを目的として,四塩化炭素(CCl4)分子の解離性トンネルイオン化過程,CCl4-> CCl3+ + Cl + e-,について研究を行った。電子ーイオンコインシデンス計測によって得られた反跳座標系における光電子角度分布 は,CF4と比べてほぼ等方的な分布を示した。一方,円偏光ヘリシティに対応して角度分布に明瞭な変化が見出され,強レーザー場における解離性イオン化において,非キラル分子が円2色性を示すことが確認された。また,イオン化軌道を選別したPECD測定に向けて,補助解離パルスを援用した電子ーイオンコインシデンス計測法の開発を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強レーザー場におけるキラル分子のトンネル電子円2色性の精密観測に向けて,分子ビーム源の設計・製作を含めて,電子ーイオンコインシデンス運動量計測系の整備が順調に進んでいる。また,強レーザー場における解離性イオン化における円2色性を異なる非キラル分子において確認し,キラル分子のトンネルイオン化ダイナミクスの理解を進める上で重要な結果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した計測系を用いて,キラル分子強レーザー場におけるPECD観測を進める。これを踏まえて,イオン化軌道と選別したPECD計測,反跳イオン円2色性(TICD)観測の実現に向けた研究を実施する。また並行して長波長赤外領域のフェムト秒超短レーザーパルスを用いた研究を行い,より深いトンネル領域でのキラル分子のトンネルイオン化ダイナミクスの理解を進める。
|