研究課題/領域番号 |
21K18947
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有澤 美枝子 九州大学, 農学研究院, 教授 (50302162)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 無保護ペプチドジスルフィド / 触媒的化学修飾法 / ロジウム触媒 / 酸化 / 挿入反応 / ペプチドポリスルフィド / シスチン / ジスルフィド結合 / 化学修飾 / 水中反応 / 遷移金属触媒 / シスチンジスルフィド結合 / 水中均一系反応 / 新機能 |
研究開始時の研究の概要 |
多くのタンパク質が高次構造構築のためにシスチン S-S 結合を有することから、本研究では、タンパク質やペプチド中のシスチン S-S 結合を直接化学修飾して、特徴的な機能を開発する。一般にペプチド化合物の化学修飾は親水性官能基を保護して有機溶媒中で行われるが、複雑な立体構造を有する生体高分子の化学修飾は、保護基を利用せずに水中均一系で直裁的に行う必要がある。本研究では、従来は有機溶媒中禁水条件で行われてきた遷移金属触媒反応を、水中均一系・室温で実施してタンパク質やペプチド中の S-S 結合の直接的な触媒的化学修飾反応を可能にする。
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研究実績の概要 |
生命の維持に必要な代謝や細胞増殖などは、タンパク質が適切な形状を可逆的に形成して機能することを基盤としている。タンパク質は特定の一次配列を持つポリアミドが複雑に折りたたまれた構造を有しており、この高次構造を形成するにあたって、シスチンジスルフィド結合とシステインチオール結合間の相互変換が大きな役割を担う。従って、シスチンジスルフィド 結合の生成と修飾はタンパク質の機能に大きな影響を与え、多様な生物機能の発現に関わる。このような背景から、タンパク質ジスルフィドを化学的に修飾することは新しい生物機能の開発のために重要な方法論になると考えた。しかし、シスチンジスルフィド結合は反応性のやや低い低極性共有結合であるためにタンパク質中で直接化学修飾した例はこれまでになく、新しい化学修飾法の開発が望まれる。 このような背景から、これまでにペプチドチオールの酸化によるシスチンジスルフィド結合の触媒的生成と、低極性なシスチンジスルフィド結合の触媒的な化学修飾法を開発した。本年度は、ペプチドジチオールの分子内酸化反応による環状ペプチドジスルフィドの生成を検討する過程で、アルコール/水混合溶媒中での酸素酸化ではロジウム触媒を変えると、ペプチドジチオアセタール誘導体を効率的に与えることを見出した。詳細を調べた結果、本生成物は、アルコールの触媒的な酸化によって生じるアルデヒドがペプチドジチオールと反応して得られることが分かった。一般に、ペプチドジチオアセタールは、ペプチドチオールをジハロメタンと反応させて合成するが、本法はアルコールの酸化によって生じたアルデヒドを利用するので、アルキル置換メチレンを導入できる特徴がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ロジウム触媒を利用する無保護ペプチドジスルフィドの生成反応と、ジスルフィド交換・リン酸エステル化などのメタせシスによる化学修飾法およびパーフルオロアリール化・ポリスルフィド化(超イオウ化)など挿入反応による化学修飾法など多くの化学修飾法を見出すことができた。特に、生体分子の講師構造を損なわない挿入反応による化学修飾法は、これまでに低極性のシスチンジスルフィド結合に直接行われた例はなく特筆に値する成果である。なお、本化学修飾で得られた生成物を利用する機能化に関する研究も新たに進めることができた。今年度はペプチドチオールの酸化過程で新たにアセタール化修飾を見出すことができ、今後生体分子の直接的な機能化や安定化を行う上で重要な成果である。以上、検討過程で見出された新しい成果を含め、本研究は概ね計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
無保護ペプチドジスルフィド結合間に直接ヘテロ元素を挿入する化学修飾法について、継続的に検討する。具体的には、セレン・リン・アルシン官能基の挿入に関する予備的な成果があるので、これを詳細に検討する。 加えて、イオウを挿入して得られたペプチドポリスルフィドは超イオウ化学種として近年注目される化学種であり、本法はこれらの唯一の簡便合成法であることから、構造展開研究や機能化に関する研究を進める。特にコロナウイルス治療薬としての薬効や、超イオウ化学種に機能性ユニットを導入するための化学修飾法についても継続的に検討が必要である。 なお、以上の現状で進行中の化学修飾法について、今後短期でまとめて国際誌などに投稿する予定である。
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